米University of North CarolinaのMugdha Gokhale氏

 DPP-4阻害薬の単剤投与で治療を開始した場合の膵癌罹患リスクは、SU薬やチアゾリジン薬を用いた場合と比べて上昇しないことが示された。いずれかの癌に罹患するリスクにも上昇は認められなかった。米国の公的医療保険制度であるメディケアの副作用報告を用いた解析結果で明らかになった。米University of North CarolinaのMugdha Gokhale氏らが、6月21日から25日までシカゴで開催されていた米国糖尿病学会ADA2013)で発表した。

 これまでに、いくつかの糖尿病治療薬は癌罹患リスクとの関連を指摘されている。DPP-4阻害薬については、膵癌発症リスク上昇との関連が報告されているが、エビデンスは限定的で結論は出ていない。

 今回Gokhale氏らは、DPP-4阻害薬の単剤投与で治療を開始した場合の膵癌罹患リスクのほか、いずれかの癌に罹患するリスクについて、SU薬またはチアゾリジン薬による単剤投与で治療を開始した場合と比較した。

 解析データには、主に高齢者を対象としている米国の公的医療保険制度であるメディケアから、2007〜2010年の副作用報告を用いた。対象は、65歳以上、DPP-4阻害薬またはSU薬またはチアゾリジンの単剤投与にて治療を開始したメディケア加入者。癌罹患リスクは、DPP-4阻害薬とSU薬、DPP-4阻害薬とチアゾリジンとの間で比較した。

 各薬剤による治療開始の定義は、登録日から6カ月以内にDPP-4阻害薬、SU薬、チアゾリジン薬を処方されておらず、最初の投与から6カ月以内に同じ薬剤または同じクラスの薬剤で2回目の投与を行った場合とした。

 アウトカムは、膵癌といずれかの癌への罹患と、生検や内視鏡検査など精密検査による診断に基づいて評価した。

 統計にはITT解析とas-treated解析を用いた。As-treated解析では、2回目の投与後からアウトカムまで、またはその他の薬剤への切り替えもしくは薬剤追加もしくは投薬中止、死亡、または試験終了時(2010年12月31日)までのデータを使用した。

 DPP-4阻害薬とSU薬の癌罹患リスクを比較するための解析対象は、DPP-4阻害薬群が1万1602人、SU薬群が4万8746人だった。DPP-4阻害薬とチアゾリジン薬を比較する解析対象は、DPP-4阻害薬群が1万8991人、チアゾリジン薬群が2万2441人だった。

 登録日より6カ月前時点でのインスリン使用率は全ての群において15〜19%だった。DPP-4阻害薬群の平均年齢は75歳で、男性割合は35%だった。

 DPP-4阻害薬とSU薬の癌罹患リスクを比較するためにas-treated解析を行った結果、膵癌イベントはDPP-4阻害薬群が11人、SU薬群は109人で確認された。DPP-4阻害薬群のSU薬群に対するハザード比は0.52(95%信頼区間[95%CI]:0.28-1.00)だった。同様に、ITT解析では、DPP-4阻害薬群が17人、SU薬群が124人で膵癌イベントが起こり、DPP-4阻害薬群のハザード比は0.67(0.40-1.12)だった。

 次に、DPP-4阻害薬とチアゾリジン薬の癌罹患リスクを比較するためにas-treated解析を行った結果、膵癌イベントはDPP-4阻害薬群が29人、チアゾリジン群は36人で確認され、DPP-4阻害薬群のチアゾリジン薬群に対するハザード比は1.11(0.67-1.83)だった。ITT解析では、膵癌イベントはDPP-4阻害薬群が37人、SU薬群が44人で、DPP-4阻害薬群のハザード比は1.15(0.74-1.81)となった。

 さらに、いずれかの癌罹患リスクについてもITT解析とas-treated解析で検討したところ、SU薬、チアゾリジン薬と比べて、DPP-4阻害薬群におけるいずれかの癌罹患リスクは有意に上昇しなかった。As-treated解析では、SU薬と比較した場合のDPP-4阻害薬群のいずれかの癌イベントのハザード比は1.03(0.99-1.07)、チアゾリジン薬と比較した場合のDPP-4阻害薬群のハザード比は0.99(0.98-1.00)だった。

 Gokhale氏はこれらの結果から、「DPP-4阻害薬による初回治療は、SU薬やチアゾリジン薬と比べて、膵癌またはいずれかの癌に罹患するリスクを上昇させるという結果は示されなかった。追跡開始から6カ月間のデータを除外し解析も行ったが結果は変わらなかった。より多くのデータを用いたさらなる解析が必要」と語った。

 また、今回の解析の限界としてGokhale氏は、治療期間が短いこと、癌イベント数が限られており測定不能な交絡因子があることなどを挙げた。