米Emory UniversityのSandra Jackson氏

 米退役軍人省VA)が運営する体重管理プログラムであるMOVE! (Managing Overweight and/or Obesity for Veterans Everywhere)が着実な成果を挙げていることが示された。3年間のプログラム参加者のデータを解析したところ平均BMIが1.3%減少し、そのうち体重維持あるいは体重減を達成した糖尿病でなかった人では有意に糖尿病発症率が低いという結果だった。米Emory UniversityのSandra Jackson氏らが、6月25日までシカゴで開催中の米国糖尿病学会ADA2013)で報告した。

 米国立衛生研究所(NIH)が実施したDiabetes Prevention Program (DPP) に代表されるような生活習慣の変化を促す介入プログラムによって、糖尿病の発症率を抑制できることは知られている。しかし、実社会ではこのようなプログラムの有用性が理解されているとは言い難く、期待したほどに普及していないのも事実だ。こうした現実を踏まえ、米退役軍人省はヘルスケアサービスの一環として、2005年から体重管理プログラムであるMOVE!に取り組んだ。MOVE!は、個人の状況に応じて体重管理のための指導を行うもので、退役軍人やその家族らが参加できる。参加者は、自らの居住地に近いVA関連の医療施設において、MOVE!を利用することができるため、気軽に取り組めるという利点がある。そのため、これまでに40万人以上の人がサービスを受けている。

 Jackson氏らはこうした事実を踏まえ、米退役軍人省が把握している情報やComputing Infrastructure (VINCI)のデータベースを使い、MOVE! の成果について解析した。目的は、どのような背景の人がMOVE!を利用しているのかを把握し、最も成果を挙げている人にはどのような特徴があるのかを明らかにすることだった。また、MOVE!を利用することでどれほどの体重減が達成可能であり、その結果、糖尿病発症率の抑制効果があるのかを調べることだった。

 対象は、BMI≧30kg/m2かBMI≧25kg/m2で糖尿病や冠動脈疾患(CAD)、高血圧などの基礎疾患のある人、年齢は18〜75歳などという条件で抽出した40万2693人だった。対象の背景は男性が88%、既婚者が52%、白人が67%などだった。最初にMOVE!を利用した際の平均年齢は56.5歳、その際すでに糖尿病だった人は38%だった。

 このうち13万5686人において、MOVE!に参加した3年間の前後で体重の変化をBMIに着目して調べたところ、平均BMIは36.3kg/m2から35.8kg/m2 に減少していた(1.3%減)。対象のうち8.7%は、6月で少なくとも8セッションのプログラムをこなし、最初のセッションから最後のセッションまで129日間で終了するなど活動的な人だった。彼らの3年間のBMIの変化は−2.7%で、それほど活動的でない人の−1.1%よりも有意な減少だった(P<0.001)。DPP試験での成績は3年で−4%であり、これに比べると減少幅は少なかったが、決して見劣りのするものではなかった。

 体重減の推移をみると、対照としたプログラムに参加していない人では体重減はほとんど見られなかったが、MOVE!参加の活動的な群ではスタートから6カ月後に−2.5%を達成し、その後もこの水準を維持していた。一方、MOVE!のプログラムにおいてさほど活動的でない人でも、6カ月後に−0.5%を達成し、その後もこの水準で推移し36カ月後には−1.0%を達成していた。

 体重減の幅別にみると、MOVE!に参加した活動的な群は4分の3が体重減を達成したかあるいは現状の体重を維持していた。また、さほど活動的でない群でも、3分の2は体重減を達成したかあるいは現状の体重を維持しており、MOVE!は体重コントロールの面で成果を挙げていた。

 糖尿病の発症抑制の面でも、MOVE!の成果が確認された。糖尿病の人のうちMOVE!への参加が活発だった人は9.6%で、非糖尿病の7.8%に比べて有意に多いという結果だった(P<0.01)。その糖尿病の人の3年間の体重は1.7%減で、非糖尿病の人の0.9%減より有意に減少幅が大きかった(P<0.01)。また、3年間のデータがあり、ベースライン時に糖尿病でなかった6万6933人のうち、3年間の観察期間で糖尿病を発症したのは18.7%だった。この集団において、3年間の体重の変化と糖尿病発症との関連を調べたところ、体重の変化が現状維持か減少の人では、発症率が20%以下であった。体重維持あるいは体重減を達成した人と、体重増となった人で3年間の糖尿病発症の相対リスク(ベースラインでのBMI、年齢、性別で補正)を求めたところ0.84となり、MOVE!への参加で体重維持あるいは体重減を達成した人は有意に糖尿病発症率が低いという結果となった(P<0.001)。

 演者らは今回の解析によってMOVE!の成果の一端が明らかになったとし、今後ともMOVE!の効果について検討を続けていく意向を示した。