ドイツBoehringer Ingelheim Pharma社のGabriel Kim氏

 複数のメーカーが開発中のナトリウム・グルコース共輸送体Sodium Glucose Transporter:SGLT)2阻害薬の副作用の1つとして尿路感染症が報告されている。SGLT2阻害薬の1つであるempagliflozinの投与例では、尿路感染症の発生率はプラセボ群と同程度だったが、性器感染症の発生率はプラセボ群より多かったことが示された。ただし発生率は低く、ほとんどは軽症だったことも明らかになった。ドイツBoehringer Ingelheim Pharma社のGabriel Kim氏らが、6月21日から25日までシカゴで開催されていた米国糖尿病学会ADA2013)で発表した。

 SGLT2阻害薬は、血液中の過剰な糖を尿中に積極的に排泄させることで血糖値を減少させるという新しい作用機序を持つ経口薬。現在、国内では複数の第3相試験が進行している。Empagliflozinは、今年3月に欧州と米国に対して2型糖尿病治療薬として承認申請されている。

 これまでの臨床試験データから、SGLT2阻害薬の主な副作用は尿路感染症であることが報告されている。SGLT2阻害薬によって尿中の糖濃度が高くなり、菌が繁殖しやすい状態になっていると考えられいる。特に女性では、主にカンジダに起因する性器感染症が見られるとされている。

 今回Kim氏らは、2型糖尿病患者を対象にempagliflozinを10mgまたは25mgを1日1回24週間投与した4つの第3相試験についてプール解析を行い、尿路感染症と性器感染症の発生率について検討した。対象となった4つの試験は、単剤投与、メトホルミンとの併用、メトホルミンとSU薬との併用、ピオグリタゾン±メトホルミンとの併用をそれぞれ検討したもので、いずれもこのADA2013で発表された。

 解析対象は、4つの無作為化プラセボ対照試験に登録された2型糖尿病患者で、各試験の開始時にHbA1c値が7.0〜10.0%、BMIが≦45kg/m2の条件を満たした患者。

 プール解析の対象は2477人で、プラセボ群が825人、empagliflozin 10mg投与群が830人、empagliflozin 25mg投与群が822人だった。

 患者背景はほぼ同じで、女性割合が44.7%、平均年齢が55.6±10.2歳、平均BMIが28.7±5.5kg/m2、HbA1c値が7.98±0.85%だった。慢性または再発の尿路感染症歴を持つ患者の割合は5.1〜6.4%、性器感染症は0.5〜1.6%だった。

 まず、尿路感染症について解析した結果、尿路感染症の発生率は、プラセボ群が8.2%、empagliflozin 10mg群が9.3%、empagliflozin 25mg群が7.5%だった。

 男女別に見ると、男性ではプラセボ群が3.8%、empagliflozin 10mg群が1.9%、empagliflozin 25mg群が1.1%だったのに対し、女性はそれぞれ13.0%、18.5%、15.9%で、女性患者で発生率が高かった。

 また、慢性または再発の尿路感染症の既往歴がない患者における尿路感染症の発生率は、プラセボ群が7.4%、empagliflozin 10mg群が8.4%、empagliflozin 25mg群が6.6%だったのに対し、既往歴を持つ患者はそれぞれ20.8%、26.2%、23.9%と高率だった。

 同様に、性器感染症について解析したところ、性器感染症の発生率は、プラセボ群が0.7%だったのに対し、empagliflozin 10mg群が4.2%、empagliflozin 25mg群が3.6%となり、empagliflozin群で高率だった。

 男性よりも女性における発生率が高く、男性における性器感染症の発生率はプラセボ群が0.5%、empagliflozin 10mg群が2.6%、empagliflozin 25mg群が1.1%で、女性ではそれぞれ1.0%、6.3%、7.0%だった。

 慢性または再発の性器感染症の既往歴を持つ患者の性器感染症発生率は、プラセボ群が14.3%、empagliflozin 10mg群が50.0%、empagliflozin 25mg群23.1%となり、既往歴を持たない患者の0.6%、4.0%、3.3%と比べて高率だった。

 さらに、尿路感染症の発生回数をみたところ、プラセボ群とempagliflozin群のいずれにおいても、90%以上の患者が「0回」だった。「1回」は6.8〜7.8%で、2回以上は0.7〜1.4%だった。また症状の程度別にみると、いずれの群でも感染なしが90%以上と大半だった。軽症は6.7〜7.5%だった。中等度以上は0.9〜1.8%だった。

 一方、性器感染症の発生回数が「0回」だった人の割合はプラセボ群の99.3%、empagliflozin 10mg群の95.8%、empagliflozin 25mg群の96.4%だった。「1回」以上は、それぞれ0.7%、4.2%、3.6%だった。症状の程度別にみると、多くは感染なしだった。軽症以上は、それぞれ0.7%、4.2%、3.6%だった。

 なお、尿路感染症、性器感染症を発症したほとんどの患者は、投与量の減量や投与中止に至らなかった。

 これらの結果からKim氏は、「empagliflozin 10mgまたは25mg投与は、尿路感染症の発生頻度を上昇させなかったが、性器感染症についてはプラセボ群と比べて上昇した。また尿路感染症、性器感染症ともに、男性よりも女性の方が発生頻度が高かった。ただし、尿路感染症または性器感染症が発生した患者の多くは1回のみのであり、その多くは軽症だった」とまとめた。