米疾病管理予防センター(CDC)のNilka R. Burrows氏

 米国における成人糖尿病患者の急性心筋梗塞(AMI)および脳卒中による入院発生率が改善し、非糖尿病患者との差は1988年の3倍から2009年の1.5倍に縮小したことが米疾病管理予防センター(CDC)のNilka R. Burrows氏らの分析で明らかになった。6月12日までフィラデルフィアで開かれた米国糖尿病学会(ADA2012)で発表された内容によると、年齢、性別、人種による差も縮小していたという。

 糖尿病患者の生命予後は非糖尿病患者に比べて悪いことで知られるが、血糖管理の徹底や喫煙などリスク因子の減少によって、近年は改善傾向も認められる。米国成人糖尿病患者における心血管疾患(CVD)死亡率が1997年から2006年にかけて40%減少したことも今年報告されている(Diabetes Care. 2012 Jun;35(6):1252-7.)。

 Burrows氏らはこれに関する入院発生率の変化を見るため、退院患者の全国調査(National Hospital Discharge Survey:NHDS)および全米健康調査(National Health Interview Survey=NHIS)から1988〜2009年の45歳以上人口のデータを抽出。糖尿病患者のAMIおよび脳卒中による入院発生率の経時的変化を折れ線回帰分析(Joinpoint Regression)で検討した。

 まずAMIについて、年齢調整人口1000人あたり入院発生率の変化を糖尿病の有無別に分析したところ、糖尿病群、非糖尿病群とも減少傾向にあったものの、糖尿病群の減少幅は-6.1%と非糖尿病群の-2.3%より大きく、糖尿病の有無による差が80年代より小さくなっていた。糖尿病群入院発生率の経年的変化(Annual Percent Change=APC)をみると、1988〜2000年の-3.2%が2001〜09年は-10.7%となり、2001年を境に減少率が一段と大きくなっていた。

 脳卒中の年齢調整人口1000人あたり入院発生率も同様で、糖尿病群、非糖尿病群とも減少傾向にあったものの、糖尿病群の減少幅は-4.0%と、非糖尿病患者の-0.6%より大きく、糖尿病の有無による差がかつてより小さくなっていた。糖尿病群入院発生率のAPCをみると、AMIより早く1997年に減少が大きくなるポイントが訪れていた。

 さらにAMIおよび脳卒中による入院発生率の差を、糖尿病患者と非糖尿病患者それぞれに経年的に検討すると、1988年の3.0倍から2009年には1.5倍と半分に縮小していることが明らかになった。

 糖尿病患者に限って、年齢層別にAMIによる入院発生率の変化を検討したところ、高齢ほど入院率が高い傾向は80年代から続いていたが、どの年齢層の入院率も一貫して有意に減少しており、また、年齢による差が経時的に縮まっていた。特に65歳以上および75歳以上の層では2000年前後を境に減少傾向が強まっており、高齢層ほど急速に入院発生率が減少していることが明らかになった。

 脳卒中については、減少が急速に早まるポイントはAMIより早く1990年代後半に訪れていたが、それ以外はAMIと同様の傾向で、高齢層ほど急速に入院発生率が減少している状況yが明らかになった。

 また、性別によるAMIおよび脳卒中による入院発生率の変化をみると、男性ではAMI、脳卒中とも1996年前後に減少が急速になるポイントがあったが、女性では2000年前後にポイントが訪れており、男性のほうが変化の出現が早いことが示唆された。人種差についても検討したところ、黒人では1995年ごろからAMIの、1988年より前から脳卒中の入院発生率の急速な減少が始まっていたが、白人の減少ポイントはそれより遅く訪れており(AMIは2002年、脳卒中は1998年)、人種差もあることが分かった。

 Burrows氏は、こうした入院発生率の減少は、米高脂血症治療ガイドラインATP IIIの登場などでリスク因子がより良く管理・治療されるようになった影響が示唆されるとしながら、「この傾向を維持あるいはさらに改善するため、さらなる努力の継続が求められる」と述べている。

(日経メディカル別冊編集)