選択的GPR40アゴニストLY2881835が、前臨床の2型糖尿病モデルにおいてインスリンおよびGLP-1分泌を促進し、血糖値を正常化することが明らかになった。同研究を行ったLilly Research LaboratoriesのAnne Reifel Miller氏らは、この化合物が2型糖尿病の理想的な治療アプローチになりうるとしている。6月12日までフィラデルフィアで開催された第72回米国糖尿病学会(ADA)のLate Breakingセッションで、Miller氏が発表した。

 GPR40は、遊離脂肪酸受容体1(FFAR1)としても知られるタイプ1(クラスA)G蛋白共役受容体(GPCR)で、膵島β細胞表面に発現している。中鎖、長鎖遊離脂肪酸によって活性化され、グルコース依存的インスリン分泌を促進する。これまでにもいくつかのGPR40アゴニストが、高血糖状態においてのみ用量依存的なインスリン分泌作用を示すことが報告されており、糖尿病治療薬としての開発が進められている化合物もある。

 今回報告されたMiller氏らの化合物LY2881835は、新規骨格を有するGPR40アゴニストで、ヒトGPR40受容体を過剰発現させたAGK293細胞において、高い有効性が示されている。GPR40受容体に対するEC50は233nM、リノール酸と比較して効果は92%。GPR43、120、119、PPARα受容体、PPARβ受容体、PPARγ受容体は活性化しない選択的GPR40アゴニストだ。

グルコース依存的インスリン分泌を促進
 マウス、ラット、ヒトの初代培養膵島細胞では、10μMのLY2881835+11.2mMグルコースの添加によって、有意なインスリン分泌増加が認められた。また正常マウスでのLY2881835(0.03、0,1、0.3、1、3mg/kg/日)経口投与4日後における腹腔内ブドウ糖負荷試験(ipGTT)では、インスリン上昇に続く用量依存的な血糖値低下が認められ、1mg/kgおよび3mg/kgでは血糖値が正常化した。作用の大きさを、溶媒コントロール0%、3mg/kgを100%とするとED50は0.14mg/kgと計算された。

 SDラットを用いて行った正常血糖高インスリンクランプ試験では、LY2881835を3mg/kg経口投与したラットにおいて、溶媒投与のラットと比較して、平均総グルコース注入量が有意に多かった。インスリンは、LY2881835投与後に迅速で大きな増加を示し、その後、プラトーに達していた。

 同氏らはさらに、経時的インスリン抵抗性の進展を認めるインスリン抵抗性モデルラットZucker fa/fa を用いた耐糖能試験を実施。溶媒群を対照とし、LY2881835の4用量(0.03、0.1、0.3、1mg/kg)と、ロシグリタゾン3mg/kgを比較した。第1日目には、溶媒投与によって血糖値が上昇。LY2881835投与によって、血糖値は用量依存的に低下したが、ロシグリタゾンは、ほとんど活性が認められなかった。第21日目にも同様に、溶媒投与による血糖値上昇と、LY2881835投与による用量依存的な血糖値上昇の抑制が認められ、ロシグリタゾンでも血糖上昇が抑制された。また同試験におけるインスリンレベルから、第1日目と比較して、インスリン抵抗性の進行している21日目には、より多くのインスリンを要していたことが示された。

マウス細胞およびin vivoでGLP-1分泌を促進
 GPR40は膵臓β細胞のほか、小腸や盲腸にも発現しており、マウス腸内分泌細胞STC-1でも発現を認める。STC-1細胞は遊離脂肪酸に反応してGLP-1を遊離することが報告されている。Miller氏らは、リノール酸をポジティブコントロール、溶媒のDMSOをコントロールとして、STC-1細胞におけるGPL-1分泌に対するLY2881835の作用を検討。DMSOと比較して、統計学的に有意なGLP分泌の増加を認めた。またin vivoでも、同分子30mg/kgの投与によって、投与後15分、30分、90分、180分において、溶媒コントロール群と比較して、血漿中のGLP-1循環量が有意に上昇していることを示した。GLP-1分泌のAUCもLY2881835を投与した動物において、統計学的に有意に大きかった。

 これらの結果を受け、Miller氏らは、「LY2881835はグルコース依存インスリン分泌作用(GDIS)とGLP-1分泌作用を併せ持つ強力で効果的なGPR40アゴニストであり、2型糖尿病に対する理想的な治療アプローチになりうる」と、同化合物の今後に大きな期待を示した。

(日経メディカル別冊編集)