米クリーブランド・クリニックのSangeeta R. Kashyap氏

 HbA1cの改善や減量、肥満に付随する疾患の軽快に効果が報告される肥満手術で、術後2年の追跡を行った結果、膵β細胞機能を含めて糖代謝が総じて改善していることが報告された。肥満を伴う2型糖尿病患者を対象としたSTAMPEDE試験の成果で、米クリーブランド・クリニックのSangeeta R. Kashyap氏らが、6月12日までフィラデルフィアで開催された第72回米国糖尿病学会(ADA2012)のポスターセッションで報告した。

 STAMPEDEは一施設の無作為化比較試験で、対象患者150例を強化薬物療法(IMT)群と、薬物療法に加えて腹腔鏡下の肥満手術を行う群(Roux-en-Y胃バイパス術〔RYGB〕群、または胃スリーブ切除術SG〕群)の3群に割り付け、経過を追跡している。

 治療開始12カ月後には薬物療法+肥満手術群でHbA1cがより大幅に改善、減量幅も大きく、薬物使用率も低いことが明らかになり、先日の米国心臓学会(ACC2012)で報告された。

 今回発表された内容はこのサブ研究という位置づけ。150例のうち62例について治療後24カ月のフォローアップを行い、血糖コントロール状況や膵β細胞機能、体組成の変化を3群間で比較した。

 24カ月まで追跡できたのはIMT群17例、RYGB群18例、SG群19例の計54例。平均年齢48.4歳、6割が女性、7割が白人だった。ベースライン時の3群の平均体重は104.3kg、BMIは36.1kg/m2、HbA1cは9.7%。54例中41例が3剤以上の糖尿病治療薬を併用していたほか、51例がメタボリックシンドロームと診断されていた。脂質異常症、高血圧の有病率も6割を超えていた。

 24カ月目の血糖状態はIMT群8.4%、RYGB群6.7%、SG群7.1%で、いずれの群もベースライン時より低値を維持できていた。HDLコレステロールやトリグリセリド、高感度CRP値は3群とも有意に改善しており、特に手術群で大幅なHDLコレステロール上昇や高感度CRPの低下が認められた。

 また、混合食負荷試験で血中グルコース濃度とインスリン分泌量の変化を検討したところ、ベースライン時には3群ともにグルコース濃度とインスリン分泌量がゆっくり上昇し、食後2時間経ってもほとんど下がらない傾向が観察されたが、24カ月後には手術群でのみ、食負荷後いったん値が急上昇し、食後2時間までに低下するという正常な糖代謝に変化していた。なかでもRYGB群ではこの傾向が顕著で、食後2時間のグルコース濃度は食前と同じレベルにまで戻っていた。

 手術群では、24カ月のあいだに糖尿病が寛解した患者も多く認められた。糖尿病治療が不要になった患者はRYGB群で12例(66.7%)、SG群で7例(38.9%)に達し、治療を続けた患者もほとんどが薬剤数を減らしていた。IMT群ではこうした減少はなく、むしろ糖尿病治療薬を3剤以上服用する患者が増えていた。高血圧や脂質異常症などの心血管疾患治療薬についても同じ傾向があった。

 手術群の24カ月目の体重は、RYGB群79.9kg、SG群77.5kgで、12カ月目から2kgほど増加していたが、ベースライン時と比較すれば20kg以上の減量幅が維持されていた。一方、体組成については、RYGB群でベースライン時に比べた総体脂肪率が-10.6%、体幹脂肪率-15.9%と、SG群(順に-7.7%、-10.1%)を有意に上回る改善が認められた。

 肥満手術のこうした効果は膵β細胞機能やインスリン感受性にも表れた。膵β細胞機能をOral disposition indexで評価したところ、RYGB群の膵β細胞機能はベースライン時の数倍に上昇し、IMT群より有意に高くなっていた。SG群でも膵β細胞機能は上昇していたが有意な変化ではなかった。インスリン感受性はどちらの手術群もIMT群に比べ有意に亢進していたが、RYGB群の亢進のほうが有意に大きかった、

 RYGB群ではGastric Inhibitory Polypeptide(GIP)やグルカゴン様ペプチド1(GLP1)といったインクレチン分泌能も有意に改善しており、糖代謝が総じて向上していることが示唆された。

(日経メディカル別冊編集)