英国Royal County Hospital and University of SurreyのDavid Russell-Jones氏

 1型糖尿病患者のべーサルボーラス療法において、新規の超持効型インスリン デグルデク(以下、デグルデク)の投与タイミングを日々変更する治療が投与時間を一定に設定する標準的な治療に対し、HbA1cの改善において非劣性であり、安全性にも問題がないことが報告された。6月12日までフィラデルフィアで開催された第72回米国糖尿病学会(ADA2012)で、英国Royal County Hospital and University of SurreyのDavid Russell-Jones氏らが発表した。

 デグルデクは、2型糖尿病患者を対象として、デグルデクの1日1回投与で投与時間を選ばない治療と、持効型インスリン グラルギン(以下、グラルギン)の1日1回投与で投与時間をきちんと設定した治療の効果が既に比較され、デグルデクがグラルギンに対し非劣性であることが確認されている。今回は、より厳格な血糖管理を要すると考えられている1型糖尿病患者を対象に、超速効型インスリン アスパルト(以下、アスパルト)を併用するべーサルボーラス療法において、デグルデクで投与時間を選ばない治療と投与時間をきちんと設定した治療で有効性と安全性を検討した。

 試験は米国、ドイツ、英国、ポーランド、ベルギー、ノルウェーの6カ国で、目標とする血糖値を達成できるようにインスリン投与量を調整するtreat-to-target方式を採用し、オープンラベル無作為化試験として実施された。登録基準は、18歳以上、1型糖尿病歴が12カ月以上、前治療として3カ月以上のべーサルボーラス療法の実施、HbA1c(NGSP値)が10.0%以下、BMIが35kg/m2以下だった。

 登録基準を満たした1型糖尿病患者を、デグルデクを1日1回、投与時間を変えて投与する群(Flex群、164例)と、デグルデクを1日1回、夕食時に投与する群(Fix群、165例)に無作為に割り付けた。Flex群の投与時間は自由な時間に注射することを想定し、月曜日は朝、火曜日はその40時間後の夜間、水曜日はその8時間後の朝、木曜日はその40時間後の夜間、金曜日はその8時間後の朝、土曜日はその40時間後の夜間、日曜日はその24時間後の夜間に設定し、これを26週間繰り返した。両群で併用するアスパルトは各国の承認内容に従い、毎日同じ時間に投与することとした。

 ベースラインの患者背景に関しては、性別、人種、年齢、体重、BMI、1型糖尿病歴、HbA1c値、空腹時血糖値で、両群間に差を認めなかった。

 26週間の試験期間中に、Flex群もFix群も有害事象、コンプライアンス不良、併用薬違反などの理由で、26例(16%)ずつ脱落し、最終的にFlex群138例、Fix群139例が解析対象となった。

 解析の結果、HbA1c値は両群とも試験開始早期から低下し、ほぼ同様の推移を示し、Flex群のFix群に対する非劣性が証明された。空腹時血糖値に関しては、両群とも試験開始早期から低下したが、Fix群の方が17.1mg/dL有意に低下した(P<0.05)。

 また、ベースライン時と26週時に、朝食前、朝食後90分、昼食前、昼食後90分、夕食前、夕食後90分、就寝時、午前4時、翌日の朝食前の計9回、自己血糖測定を行い、血糖値の推移の違いを両群で比較したところ、いずれも両群はほぼ同等の推移を示した。

 低血糖に関しては、低血糖を自覚あるいは毎日の血糖測定で低血糖と判断した時に、患者自身で対応できなかった場合を重度の確定低血糖と定義した。また、患者自身で対応できた場合でも血糖値が56mg/dL未満であれば軽度の確定低血糖と定めた。

 重度の確定低血糖の発現率は、Flex群が0.34件/患者・年、Fix群が0.37件/患者・年、また重度と軽度を合わせた確定低血糖はそれぞれ82.4件/患者・年、88.3件/患者・年で、いずれも有意差はなかった。一方、夜間の確定低血糖はそれぞれ6.23件/患者・年、9.61件/患者・年で、Flex群の方が37%有意に低かった(P<0.01)。

 Russell-Jones氏は以上の結果を踏まえ、「デグルデクは投与のタイミングが異なってもHbA1cの改善効果は変わらないことが示され、安全性が損なわれないことも確認された。したがって、1型糖尿病患者はデグルデクを使用することで、基礎インスリンの注射時間を少し自由に設定できる可能性がある。注射時間が自由になればインスリン療法がより簡便になり、アドヒアランスの向上が期待できるのではないか」と語った。

(日経メディカル別冊編集)