糖尿病患者において、妊娠前に葉酸の摂取量を増やしたり、HbA1c値を改善すると、そうしなかった場合に比べ、胎児合併症や新生児ユニット(NNU)への入院などが減ることが示された。6月12日までフィラデルフィアで開催された第72回米国糖尿病学会(ADA2012)で、アイルランドNational University of Ireland GalwayのElhaytham Mustafa氏らが発表した。

 2型糖尿病患者の患者数が世界的に増加するに伴い、糖尿病は、妊婦において最も多く見られる代謝異常となっている。糖尿病は、母親と新生児の両方に合併症を引き起こす大きなリスクとなる。妊娠前のケア(PPC)を専門とするクリニックにおいて、血糖コントロールの管理、葉酸の摂取、薬剤の再検討、糖尿病合併症の検査を行うことで、周産期の罹患率と死亡率を一般集団に近いレベルまで減少させ、母体罹患率を改善できるとされている。

 今回、糖尿病患者を対象に、PPCに参加した群としなかった群で比較した。糖尿病患者の妊娠に関するATLANTIC DIPやDIAMONDのデータベース、医療機関の登録リストから、出産適齢期の女性541人を登録した。招待状を送付した後に電話することでPPCへの参加を促し、PPCを実施している4つのクリニックのいずれかに参加するように依頼した。参加者には、妊娠に関する教育、避妊、食事のアドバイス、体重や血糖値のコントロール、血糖値に対する自覚、薬や合併症の再検討、葉酸5mg摂取の開始、風疹の状況確認などをプロトコルに沿って行った。

 PPCを受けたのは、1型糖尿病では90人、2型糖尿病・耐糖能異常(IGT)・空腹時血糖異常(IFG)では72人と計162人だった。

 そのうち、妊娠を確認したのは参加群102人、非参加群37人で計139人。患者背景を比較すると、年齢はPPC参加群が33.8歳、非参加群が31.3歳で有意差が認められた(P=0.01)。葉酸摂取率はそれぞれ100%、18%、登録時の平均HbA1c値はそれぞれ6.6%、7.9%、登録時のHbA1c値が7%未満だった割合はそれぞれ74%、27%で、いずれも参加群で有意に高かった(すべてP<0.001)。また、両群とも妊娠期間中は血糖値が改善していた。

 これまでに出産を終えたのは、参加群70人、非参加群26人だった。低血糖、黄疸、呼吸困難や多血症を含む胎児合併症の発症率は、参加群が20%、非参加群が50%で、参加群で有意に低かった(P=0.04)。一方、母体の合併症には有意差はなかった。NNUへの入院はそれぞれ41%、85%で、参加群の方が有意に低かった(P<0.005)。また、死産や先天性奇形は参加群ではなく、非参加群ではそれぞれ3.8%、7.7%だったが、有意な差はなかった。流産は参加群18%、非参加群13%と、有意差は認められなかったが、2009年にMustafa氏らが報告した22%よりも優れた結果だった。

 これらの結果からMustafa氏は、「糖尿病患者において、妊娠前に葉酸摂取量の増加やHbA1c値の改善などの実践が推奨される」と結論した。NNU入院率が減少するため、結果的に医療費も抑えられる可能性もあると指摘した。

(日経メディカル別冊編集)