Kaiser Permanente社The Center for Health ResearchのSuma Vupputuri氏

 慢性腎臓病(CKD)を合併した糖尿病患者における治療費はCKDのステージが進むごとに高額となり、ステージ0〜2の患者がステージ3以降に移行した場合に治療費は約2倍にのぼる―。軽度の腎機能低下の時期から積極的に介入治療することが長期の治療コスト抑制につながることが、米国内の民間医療保険データを用いたコスト解析から指摘された。6月12日までフィラデルフィアで開催された米国糖尿病学会(ADA2012)で、米Kaiser Permanente社The Center for Health ResearchのSuma Vupputuri氏が発表した。

 Vupputuri氏らは、Kaiser Permanente社の北西部およびジョージア州における医療保険プランのデータを解析し、18歳以上の2型糖尿病患者で2005年におけるeGFR値が明らかであり、2005年以降に少なくとも1回以上のeGFR値が測定された患者2万5586人を対象として、2010年12月31日までの状況を追跡した。透析例、腎移植例、および、eGFR<15mL/分/1.73m2の著明な腎機能低下例は除外した。

 K/DOQIガイドラインに基づくCKD分類を採用し、ベースライン時におけるCKDのステージ別に入院治療・外来治療・薬剤の年間コスト、および、約5年の追跡期間における年間コストの増加を検討した。その際、経済変動を考慮し、2010年の治療費に標準化して比較した。

 ベースラインにおいてCKDのステージ0〜1が8647人(33.8%)、ステージ2が1万2371人(48.4%)、ステージ3が3885人(15.2%)、ステージ4が683人(2.7%)であり、ステージが高くなるほど高齢、男性比率が低く、黒人の割合が低く、糖尿病罹患期間が長かった。また、心血管・脳血管疾患の合併率が高く、網膜疾患、ネフロパシーの合併率も高かった。治療薬の内容は、ステージが高くなるほどメトホルミンの処方率は低く、SU薬の処方率はやや高く、インスリンの処方率は高かった。また、ACE阻害薬・β遮断薬などの降圧薬およびスタチンの処方率もステージが高くなるほど高かった。

 年間治療コストは、CKDのステージが高いほど高額であり、入院治療・外来治療・薬剤を合計した総コストの平均はステージ0〜1の患者で年間6551ドル、ステージ2が年間8206ドル、ステージ3が年間1万2529ドル、ステージ4が年間2万3229ドルだった。

 さらに、約5年の追跡期間におけるステージの進行状況は、ベースライン時ステージ0〜2の患者のうち約12%がステージ3以上に進行。ステージ3の患者では約25%がステージ4以上に進行、ステージ4の患者では約30%が末期腎不全へと進行した。ステージが高いほど、ステージ進行率が高かった。

 CKDのステージが進行しない場合でも、追跡期間が経過するごとに治療コストは増加するが、ステージが進行した場合の治療コスト増加はより大幅だった。ベースラインでステージ0〜2の患者では、ステージが進行しない場合の年間コストの増加は3121ドルだったのに対し、進行した場合のコスト増加は7688ドルと、2倍以上だった。さらにステージ3では非進行患者のコスト増加6481ドルに対して、進行患者では1万9098ドル。ステージ4の非進行患者では1万110ドルに対して、進行患者では4万3272ドル。ステージが高いほど、ステージ進行に伴うコストは大幅に増加した。

 また、ベースラインでステージ0〜2の患者のうち、ステージが進んだ患者のコストの内訳を見ると、特に入院治療費が進行前の5051ドルから進行後は1万2124ドルに増加していた。

 これらの結果から、Vupputuri氏は「糖尿病患者の軽度の腎機能低下の時期であっても、CKDの進行に伴う治療コストの増加が認められ、高ステージに進行するほど増加幅は大きくなった。CKDの早期からの進行抑制は、長期管理における総コストの抑制につながる」と結論した。

(日経メディカル別冊編集)