熊本大学大学院生命科学研究部代謝内科学の本島寛之氏

 日本人の高血圧合併2型糖尿病患者にシタグリプチンを1年間投与した結果、収縮期血圧が有意に低下したことが示された。熊本大学大学院生命科学研究部代謝内科学の本島寛之氏が、6月12日までフィラデルフィアで開催された米国糖尿病学会(ADA2012)で発表した。

 本島氏らは、高血圧を合併した日本人の2型糖尿病患者へのシタグリプチン投与が収縮期血圧および拡張期血圧に及ぼす影響について、後ろ向き解析を行った。

 解析の対象としたのは、外来通院中で、シタグリプチン1日50mgを1年以上投与している、高血圧合併の2型糖尿病患者(日本人)40人。高血圧については、降圧剤を投与中、もしくは収縮期血圧135mmHg以上または拡張期血圧85mmHg以上とした。シタグリプチン投与3カ月以内には糖尿病治療薬、降圧薬を変更しないこととし、追加した場合は除外とした。

 患者背景は、年齢62.9歳、男性50.0%、BMI 25.6kg/m2、HbA1c 8.2%、糖尿病の平均罹病期間は8.5年、収縮期血圧140mmHg、拡張期血圧70mmHgだった。シタグリプチン投与前の投薬状況は、カルシウム拮抗薬64.3%、ARB 53.6%、スタチン39.3%、SU薬92.9%、メトホルミン71.4%、α-GI 67.9%だった。

 シタグリプチン投与により、HbA1c値と収縮期血圧はベースライン時と比べ、投与開始3カ月、6カ月、12カ月後に有意に低下した。具体的には、HbA1c(JDS値)はベースラインの8.2%から、3カ月後は7.5%、6カ月後は7.4%、12カ月後は7.2%に低下。収縮期血圧は、ベースラインの140mmHgから、それぞれ130mmHg、130mmHg、132mmHg(いずれもベースラインと比較して、P<0.05)。BMIと拡張期血圧については、有意な低下はみられなかった。

 シタグリプチン投与群のナトリウム/クレアチニン比は2.1±0.9で、シタグリプチン未投与群の1.1±0.6と比べ、高かった。

 3、6、12カ月後の収縮期血圧の変化量(ベースラインとの差)を足し合わせた値(S)をもとに、A群(S>15)、B群(15≧S≧-15)、C群(S<-15)3群に分け、さらに解析を行った。A群に分類されたのは18%、B群は21%、C群は61%だった。

 3群間の患者背景を見ると、年齢、性別、BMI、HbA1c、拡張期血圧、糖尿病罹病期間に有意な差はなかった。有意な差が見られたのは、ベースライン時収縮期血圧で、C群の144mmHgに対し、A群は132mmHgで、C群が有意に高かった(P=0.0072)。降圧薬服薬率についても有意差があり、A群の44%に対し、C群は90%だった(P=0.04)。

 シタグリプチン投与で収縮期血圧が大きく減少したC群では、収縮期血圧の顕著で有意な変化が見られたが(145→128→127→129mmHg)、拡張期血圧の変化はわずかだった(71→65→67→65mmHg)。一方、A群では、治療開始3カ月後、12カ月後で収縮期血圧の有意な上昇が確認された。

 これらの結果から本島氏は、「降圧剤を投与している高血圧合併の日本人2型糖尿病患者へのシタグリプチン投与は、収縮期血圧を下げることで、糖尿病合併症やアテローム性動脈硬化を予防する効果があるのではないか」と語った。また、シタグリプチン投与で血圧が降下するメカニズムについては、尿中のナトリウム排泄が増加することによる可能性を指摘した。

(日経メディカル別冊編集)