米国国立糖尿病・消化器病・腎臓病研究所のBrian A. Grice氏

 残留性有機汚染物質(POPs)曝露と2型糖尿病発症の関係について検討した結果、POPsのうち3つの物質について、糖尿病発症リスクが有意に高まることが示された。米国国立糖尿病・消化器病・腎臓病研究所のBrian A. Grice氏が、6月12日までフィラデルフィアで開催された米国糖尿病学会(ADA2012)で発表した。

 Grice氏らは、残留性有機汚染物質(POPs)と2型糖尿病発症の関係について検討するため、農薬に接触する機会が多い米国先住民族を対象に、血清中のPOPs濃度を調べるケース・コントロール研究を行った。

 対象は、糖尿病を発症していない先住民のピマ族300人(年齢中央値は24歳)。ベースライン時の検査は1969〜74年に実施した。対照群の151人は、少なくとも10年間は糖尿病を発症していない人とし、追跡期間は24.0年。ケース群(149人)の平均追跡期間は7.7年間。

 POPsは、マイナス20度に凍結した血清から測定した。ベースライン時の凍結血清中からは、35種類のポリ塩化ビフェニル(PCB)と9種類の残留性農薬(PST)が検出された。4種類のPOPsは、サンプルの75%で検出されなかったため、解析対象から除外した。

 試験参加者の背景で有意差があったのは年齢(ケース群28.3歳 対 対照群21.0歳)、BMI(29.4kg/m2 対 27.4kg/m2)、トリグリセリド(171mg/dL 対 123mg/dL)、OGTT2時間血糖値(109mg/dL 対 96mg/dL)。

 各POPsにおいて糖尿病のオッズ比を算出したところ、3つのPOPsで有意な糖尿病発症リスクの増加が見られた。PCB 195のオッズ比は1.06(95%信頼区間:1:01-1:11)、PCB 151のオッズ比は1.05(95%信頼区間:1:01-1:09)、PCB 066のオッズ比は1.06(95%信頼区間:1:00-1:11)だった。また、90%以上のPOPsにおいてオッズ比が1よりも高かった。この結果は、血糖値やコレステロール値を考慮しても変わらなかった。ただ、トリグリセリド値で調整した場合に有意差が見られたのはPCB 151だけだった。

 血清中の残留性有機汚染物質について、ピマ族のデータ(1969-1974)とアメリカ全国健康栄養調査のデータ(2003-2004)を比較したところ、ピマ族のPOPs濃度は2.3〜253.1倍(中央値15.9倍)高かった。

 Grice氏は、多くのPOPsにおいてオッズ比が1を超えていたことについて、「糖尿病の発症が、POPs暴露の影響を受けていることを示唆している」とし、今後は用量反応関係を含め、さらなる検討が必要だと語った。

(日経メディカル別冊編集)