英国University of LondonのRichard D. Leslie氏

 診断から5年以内の30〜70歳の糖尿病患者6156人を対象とする、欧州9カ国の多施設が参加した大規模コホート研究の結果、欧州における成人潜在性自己免疫性糖尿病LADA)の頻度は、これらの糖尿病患者の6.3%であることが分かった。LADAの患者は他の1型糖尿病患者と比べてBMIが低いが、GAD抗体価が高い例の頻度はいずれも80%前後で大きな差はなかった。英国University of LondonのRichard D. Leslie氏が、6月12日までフィラデルフィアで開催された第72回米国糖尿病学会(ADA2012)で報告した。

 LADA(Latent Adult onset Autoimmune Diabetes)は緩徐に発症するタイプの1型糖尿病だ。診断時の年齢が30〜70歳で、糖尿病に関連した自己抗体が陽性であり、診断時から少なくとも6カ月はインスリン療法を必要としないことを診断の条件とする。我が国で緩徐進行1型糖尿病(SPIDDM)と呼ばれるものに相当する。

 Mendez氏らは、欧州におけるLADAの頻度と特徴を明らかにする目的で、欧州9カ国の参加医療機関の糖尿病部門を受診した全糖尿病患者のうち、診断から5年以内の30〜70歳の患者を対象とするコホート研究を実施。各種臨床データに加えて、抗GAD抗体、抗IA-2抗体、抗ZnT8抗体の抗体価も評価した。

 条件を満たした患者6156人における上記の自己抗体の陽性率は9.7%だった。LADAと診断された患者は388人(6.3%)で、他の1型糖尿病と診断された患者が144人(2.3%)だった。抗GAD抗体陽性は541人(8.8%)、抗IA-2抗体陽性は144人(2.3%)、抗ZnT8抗体陽性は110人(1.8%)だった。3種の自己抗体のうち2種が陽性だったのは計91人、3種とも陽性だったのは53人だった。

 自己抗体陽性例(598人)と陰性例(5558人)の臨床データを比較すると、陽性例の方が女性が多く(50.7%対40.7%)、発症年齢が若く(47.4歳対52.5歳)、BMIが低く(27.2対30.9)、調査終了時のインスリン投与患者の割合が高く(49.5%対13.2%)、収縮期血圧が低く(116.6mmHg対122mmHg)、トリグリセリド値が低かった(1.5mmol/L対1.97mmol/L)(すべてp<0.001)。LADA患者のみと自己抗体陽性例との比較でも同様の結果が得られた。

 LADA患者と他の1型糖尿病患者との比較では、LADA患者の方が他の1型糖尿病患者よりも、発症年齢が高齢であることに加えて、BMIも高かった(p<0.001)。一方、GAD抗体価が高い例の割合はいずれも高く、同程度だった(76%対80%)。

 自己抗体陽性患者をGAD抗体価が低い例と高い例に分けて比較すると、GAD抗体価が高い例の方が女性が多く、発症年齢が若く、BMIが低く、インスリン投与患者の割合が高く、収縮期血圧が低く、トリグリセリド値が低かった。

 しかし、抗体価が低い例であっても、自己抗体が陰性の2型糖尿病患者と比べると、上記と同様に、女性が多く、発症年齢が若く、BMIが低く、インスリン投与患者の割合が高く、収縮期血圧が低く、トリグリセリド値が低かった。

 以上のデータから、Leslie氏は、「LADAと他の1型糖尿病との違いは質的なものではなく、段階的な違いであるように思われる。MHC遺伝子の頻度、陽性である自己抗体の数、加齢、肥満などの要因に応じて、小児発症1型糖尿病、成人発症1型糖尿病、LADAといった一連の自己免疫性糖尿病が発症すると考えられる。この観点からみて、LADAは自己免疫性糖尿病の独立した病型ではない」と結論づけた。

(日経メディカル別冊編集)