West Virginia University School of MedicineのOmayma Alshaarawy氏

 米国国民健康栄養調査(NHANES)データをもとに、受動喫煙と糖尿病罹患の関係が検討され、過去に喫煙歴がなくても血清コチニン(ニコチンの分解産物)濃度が高値の場合、糖尿病罹患率が高いことが分かった。これはあくまでも横断データに基づく結果であるため、受動喫煙が糖尿病発症の要因であるかは確定できないが、今後、受動喫煙による健康への影響の一つとして糖尿病のリスクが注目されることになるだろう。6月12日までフィラデルフィアで開催された米国糖尿病学会(ADA2012)で、West Virginia University School of MedicineのOmayma Alshaarawy氏が発表した。

 喫煙は心血管系疾患および死亡の強力なリスク因子であることが知られ、近年では、喫煙者のみならず、非喫煙者における受動喫煙によるこれらの疾患リスク上昇も懸念されている。当然ながら喫煙と糖尿病の関係についても注目され、喫煙者における糖尿病リスクも報告されているが、非喫煙者の受動喫煙が糖尿病のリスクとなるかについて、まだ十分なデータは示されていない。

 Alshaarawy氏らは、NHANES(1999〜2000、2001〜2002、2003〜2004、2005〜2006、2007〜2008)に登録された5万例以上のうち、20歳以上で、妊娠しておらず、心血管系疾患の既往なし、非喫煙(喫煙歴もなし)、かつ、血清コチニン濃度が明らかな8407例を対象として検討した。

 血清コチニン濃度の測定には、高感度の同位体希釈高速液体クロマトグラフィー(ID HPLC)-大気圧化学イオン化質量分析法(APCI MS/MS)が用いられ、対象者の平均値は0.07±0.003ng/mLであった。これらを≦0.035ng/mL(以下、低値群)、0.035〜0.129ng/mL(以下、中等値群)、≧0.130ng/mL(以下、高値群)の3群に分けて、糖尿病リスクを比較した。ADA基準に基づき判定した糖尿病の罹患率は、全体で6.5%だった。

 ロジスティック回帰モデルを用い、血清コチニン濃度の低値群を基準とするオッズ比を解析した結果、糖尿病罹患のリスクは低値群(オッズ比1)に比べて、中等値群で28%リスク上昇(オッズ比1.28:95%信頼区間1.03〜1.60)、高値群で56%リスク上昇(同1.56:1.23〜1.97)し、統計学的に有意な結果であることが示された(P<0.0001)。また、HbA1cも、血清コチニン濃度低値群に比べて中等値群において0.06%上昇し、高値群において0.13%上昇することが示された(P<0.001)。

 サブグループ解析では、血清コチニン濃度低値群に比べた高値群のリスクは、男性では50%上昇(オッズ比1.50:95%信頼区間1.00〜2.25)、女性では68%上昇(同1.68:1.22〜2.32)し、女性において影響が大きい傾向がみられた。また、非白人では39%上昇(同1.39:1.02〜1.90)に対して非ヒスパニック系白人では50%上昇(同1.50:1.10〜2.04)し、非ヒスパニック系白人において影響が大きい傾向がみられた。ただし、これらの男女間・人種間差に統計学的な有意性は認められなかった。

 他に、血清コチニン濃度高値による糖尿病リスク上昇が大きい傾向にあったのは、非肥満者、60歳以下の若年者だった。

 Alshaarawy氏は、今回の検討はNHANES登録者における横断データに基づいており、ニコチン曝露が糖尿病の要因として確定されるわけではないとしながらも、「血清コチニン濃度という客観的なニコチン曝露の指標を用いた検討であり、受動喫煙が糖尿病のリスクとなる可能性を示唆している」と結論し、今後プロスペクティブな検討により受動喫煙による影響を確認する必要があると語った。

(日経メディカル別冊編集)