非重症入院患者における血糖変動幅は在院日数および死亡率と正の相関関係にあり、この相関は糖尿病との診断の有無、内科・外科のいずれの患者であるかにかかわらず認められることが、入院患者960人を対象とした大規模後ろ向き研究によって示された。米国Albany Medical CollegeのCarlos E. Mendez氏が、6月12日までフィラデルフィアで開催された第72回米国糖尿病学会(ADA2012)で報告した。

 血糖変動幅の大きさは、in vitroでは酸化ストレス障害の程度と相関することが示されており、外来患者では、HbA1cとは独立した、血糖コントロールの不良を表す指標とみなされている。また、集中治療室(ICU)の患者では、血糖変動幅が大きいほど死亡率が高いことが従来の研究で示されている。一方、重篤でない入院患者ではこの種の検討が少ない。

 そこでMendez氏らは今回、非重症入院患者で、血糖変動幅の大きさと在院日数および死亡率との間に関連がみられるかどうかを、後ろ向きコホート研究によって評価した。

 対象は、米国AlbanyのStratton Veterans Affair (VA) Medical Centerに2008年1月から2010年1月までに継続的に入院した患者のうち、入院期間中に血糖値を毎日2回以上測定した960人。

 血糖変動については、各患者の血糖値の標準偏差(GSD)を算出し、血糖変動の代用指標として用いた。アウトカム指標は在院日数および90日時点の死亡率とした。さらに、糖尿病との診断の有無、内科・外科のいずれの患者か、平均血糖値、低血糖発作の有無なども調べ、各パラメーター間の関連性をポワソン回帰分析を用いて評価した。

 960人の患者背景は、平均年齢69.8歳、男性917人(95%)、平均血糖値181.3±58.6mg/dL、血糖値の平均標準偏差57.4±30.6mg/dL、平均在院日数5.7±6.5日、1日の平均血糖測定回数4.8±1.6回、低血糖発作の既往231人(24%)、90日時点の死亡率11%(死亡数102人)であった。また、内訳は、糖尿病816人(85%)、糖尿病以外144人(15%)、内科入院患者781人(81%)、外科入院患者179人(19%)だった。

 その結果、GSD(mg/dL単位)別にみた平均在院日数は、0〜30が3.3日、31〜60が5.7日、61〜90が6.5日、91〜120が7.2日、120以上が7.4日であり、GSDと在院日数との間に正の相関が認められた。GSD 10mg/dLの増加に伴う在院日数の増加率(エフェクト・サイズ)は全患者で6.03%、糖尿病患者6.1%、糖尿病でない患者5.9%、外科患者6.8%、内科患者6.0%であり、いずれも統計学的に有意な増加だった。

 このエフェクト・サイズは、低血糖発作の既往のない患者では3.8%、既往のある患者では5.8%、平均血糖値別にみると90〜140mg/dLで5.53%、141〜180mg/dLで8.17%、181〜220mg/dLで5.03%、221mg/dL以上で11.90%であり、低血糖発作の有無や平均血糖値にかかわらず、いずれも有意な増加を認めた。

 GSD別にみた90日時点の死亡率は、0〜30が9.6%、31〜60が11.0%、61〜90が14.7%、91〜120が17.7%、120超が28.2%であり、GSDと死亡率との間に正の相関が認められた。GSD 10mg/dLの増加に伴う死亡率の増加は全患者で1.09%、糖尿病患者で1.10%、糖尿病でない患者1.03%、外科患者で1.10%、内科患者で1.08%であり、このうち全患者、糖尿病患者、内科患者で統計学的に有意な増加を認めた。

 Mendez氏は、以上の結果から「非重症入院患者における血糖変動幅は在院日数および死亡率の増加と正の相関を示し、この相関は、糖尿病との診断、内科/外科の別、平均血糖値、低血糖発作の有無のいずれとも独立して認められた」と結論。その上で、今回の研究は後ろ向きで、男性の高齢患者が多く、1日の血糖測定回数が少ないという限界を挙げ、これらの点を考慮した前向き研究の必要性を指摘した。

(日経メディカル別冊編集)