Gothenburg大学のMarcus Lind氏

 糖尿病と診断されたら、すぐにHbA1c値を低下させることが、全死亡リスクと心筋梗塞発症リスクを下げるために重要なポイント―。UKPDSの20年の追跡結果を基にしたシミュレーションから、2型糖尿病と診断された後すぐにHbA1c値を低下させた場合の20年後の全死亡リスクは24.7%減少し、診断後10年目以降からHbA1c値を低下させた場合と比べ、リスクを大きく減少させたことが示された。Gothenburg大学のMarcus Lind氏が、6月12日まで米国フィラデルフィアで開催された米国糖尿病学会(ADA2012)のlate breakingセッションで発表した。

 2型糖尿病患者への厳格な血糖コントロールの効果を探った大規模臨床試験「UKPDS」において、10年間の追跡結果が2008年に報告されており、強化療法群において糖尿病合併症リスク、心筋梗塞発症率、全死亡率は有意に減少していたことが示されている。2型糖尿病の治療における“legacy effect”として、今では広く知られているが、追跡期間中の平均HbA1c値は(介入期間の)強化療法群と標準療法群でほぼ同じだった。

 Lind氏らは、過去のHbA1c値が後々の心筋梗塞や全死亡にどれだけ影響を与えるのか、HbA1cを早く低下させるほどその後に与える影響が大きくなるかについて検討した。

 対象は、UKPDSで強化療法群もしくは標準療法群に割り付けられた2型糖尿病患者3849人。HbA1c値、年齢、性別、治療群に関して、割り付けから20年目までの心筋梗塞と全死亡のハザード比を算出した。

 それらの結果から、HbA1c値の低下で全死亡リスクがどの程度減少するかの数理モデルを作成。糖尿病の診断後すぐにHbA1c値を1%低下させた場合、追跡から15年目の死亡リスクは21.0%減少。診断から10年後に低下させた場合の7.1%減少と比べ、死亡リスクは大きく減少した。追跡20年目の全死亡リスクの差は少し縮まり、診断から10年後にHbA1c値を低下させた群の減少は14.1%だったのに対し、診断後すぐに低下させた群は24.7%だった。

 同様に、HbA1c値1%低下の心筋梗塞発症リスクへの影響を算出すると、追跡15年目の心筋梗塞発症リスクは、診断から10年後にHbA1c値を低下させた場合は13.5%の減少であるのに対し、診断後すぐに低下させた場合は21.6%減少した。追跡20年目の心筋梗塞リスクの減少は、それぞれ23.9%と27.8%で、やはり差は縮まっていた。

 このモデルを使って、新たに2型糖尿病と診断された50歳男性、HbA1c値8.0%の将来をシミュレーションすると、診断から10年が経過した60歳の時点から血糖コントロールを始めてHbA1c値を7.0%まで下げた場合、70歳までの10年間の死亡リスクが6.6%減少。一方、診断直後の50歳から血糖コントロールを始めれば、70歳までの死亡リスクは18.6%減少すると算出された。

 今回の結果を受けてLind氏は、「UKPDSの10年追跡の結果からは、両群間において血糖値の差が見られなかったが、心筋梗塞や全死亡のリスクを減少させる効果は継続していたことが分かった。2型糖尿病と診断されたらすぐに治療し、良好な血糖コントロールを達成・維持することの重要性を、作成したモデルでも確認した」と強調した。

(日経メディカル別冊編集)