デンマークAarhus University HospitalのKjeld Hermansen氏

 多くの2型糖尿病患者はインスリン抵抗性を有しており、心血管疾患リスクが高い状態にある。GLP-1受容体作動薬リラグルチドは、高脂肪食を食べた後のトリグリセリド(TG)、アポリポ蛋白B48(ApoB48)の増加を胃排出能とは独立して抑えることが示された。6月8日から12日まで米国フィラデルフィアで開催された第72回米国糖尿病学会(ADA2012)で、デンマークAarhus University HospitalのKjeld Hermansen氏らが発表した。

 リラグルチドは長期臨床試験において血糖コントロールを改善し、体重を低下させることが示されているが、食後のTGに対する効果は明らかになっていない。今回、Hermansen氏らは、無作為化二重盲検プラセボ対照クロスオーバー試験を2施設で行い、脂質関連指標(TG、ApoB48、遊離脂肪酸[FFA])、血糖関連指標(血糖、インスリン、Cペプチドおよびグルカゴン)、胃排出能、体重へのリラグルチドの効果を検討した。

 対象は18〜75歳、BMIが18.5〜40kg/m2の2型糖尿病患者20人。これらの患者を、リラグルチド群(0.6mgから1.8mgまで1週ごとに漸増)とプラセボ群に無作為に割り付け、3週後のリラグルチドの最終投与から10〜11時間後に、朝食として高脂肪食(エネルギー比率で、脂肪が60%超、炭水化物および蛋白質はそれぞれ20%未満)を食べてもらった上で、各種指標を測定した。さらに、3〜9週間の休薬期間後にクロスオーバーさせ、同様の検討を行った。また、胃排出能はアセトアミノフェン法と13C-呼気試験法によって評価した。なお、リラグルチドの日本での最大用量は0.9mg。

 患者背景は、男性11例、女性9例、年齢62.7±6.0歳、体重88.2±17.0kg、BMI 30.8±4.4kg/m2、糖尿病歴8.3±5.1年、TG 1.9±0.9mmol/L、スタチン使用9例だった。

 治療3週間後に脂質値を測定したところ、TGの場合、8時間後までの曲線下面積(AUC0-8h)はリラグルチド群が13.7 h*mmol/L、プラセボ群が19.0h*mmol/Lと、リラグルチド群のプラセボ群に対する比は0.72(95%信頼区間:0.62〜0.83、P=0.0004)だった。空腹時の値を基準としたAUCの増分(iAUC0-8h)はそれぞれ2.9h*mmol/L、6.7h*mmol/Lと、その差は−3.9 h*mmol/L(同:−5.8〜−2.0、P=0.0008)。最大濃度(Cmax)はそれぞれ2.1mmol/L、3.2mmol/Lと、リラグルチド群のプラセボ群に対する比は0.66(同:0.56〜0.78、P=0.0002)だった。いずれもリラグルチド群の方が有意に低かった。

 ApoB48においても同様に求めると、AUC0-8hはリラグルチド群が0.08 h*g/L、プラセボ群が0.12h*g/Lで、その比は0.65(同:0.58〜0.73、P<0.0001)。iAUC0-8hはそれぞれ0.03 h*g/L、0.07h*g/Lで、その差は−0.03(同:−0.05〜−0.02、P=0.0003)。Cmaxはそれぞれ0.01g/L、0.02g/Lで、その比は0.59(同:0.46〜0.75、P=0.0009)だった。TGと同じく、いずれもリラグルチド群の方が有意に低かった。一方、FFAに関しては、いずれの指標も有意差は認められなかった。

 血糖関連の指標に関して、血糖やグルカゴンではAUC0-8hとCmaxにおいてリラグルチド群における有意な減少が認められた。インスリンやCペプチドでは同じくAUC0-8hとCmaxにおいてリラグルチド群における有意な増加が確認された。なお、iAUC0-8hはいずれの指標でも有意な差はなかった。

 胃排出能をアセトアミノフェン法で測定したところ、AUC0-60min、AUC0-8hおよびCmaxはすべての指標でリラグルチドとプラセボが同等だとみなされた。13C-呼気試験法でも同じく両群に明らかな差はなかった。

 体重については、試験開始時が88.2kgで、3週間後のリラグルチド群は1.1kg減、同プラセボ群は0.7kg増、その差は−1.8kg(同:−2.5〜−1.0、P<0.0001)で、有意差が認められた。

 安全性に関しては、リラグルチドは全般的に忍容されるとした。有害事象はリラグルチド群が12人、27イベント、プラセボ群が6人、8イベントであり、その多くは軽度の胃腸障害だった。

 Hermansen 氏はこれらの結果から、「リラグルチドの3週間投与により、高脂肪食負荷後のTGおよびApoB48の増加は胃排出能とは独立して有意に抑制された。TGとApoB48は経時的に並行した動態を示しているが、これは外因性のTGが分解されたことによって、TGが減少したことを示唆している」と結論した。また、「リラグルチドが、糖尿病患者に限らず、食後高TG血症を呈する患者の心血管疾患リスク減少に有用である可能性も視野に入れて、今後も研究を続けたい」と抱負を語った。

(日経メディカル別冊編集)