カナダUniversity of TorontoのBernard Zinman氏

 新規の超持効型インスリン製剤であるインスリン デグルデク(以下、デグルデク)がインスリン未治療患者へのインスリン導入療法において、既存の持効型インスリン製剤であるインスリン グラルギン(以下、グラルギン)と同等の血糖コントロールを実現するだけでなく、重度低血糖や夜間低血糖が大幅に少ないことが報告された。6月8日から12日まで米国フィラデルフィアで開催された第72回米国糖尿病学会(ADA2012)で、カナダUniversity of TorontoのBernard Zinman氏らが発表した。

 インスリンの長期使用においては低血糖の回避が課題であり、有効性とともに忍容性により優れるインスリン製剤が求められている。デグルデクは皮下注射後、皮下にマルチヘキサマー(インスリン6量体が長くつながった状態)を形成するが、その分解が緩徐なため持続的に血中に吸収されることから、超持効型に位置づけられる。Zinman氏らは、そうしたデグルデクの特徴を検証するために、既存の持効型インスリン製剤であるグラルギンを対照薬とし、目標とする空腹時血糖値を達成するようにインスリン投与量を調整するtreat-to-target方式で比較した。

 対象の登録基準は、18歳以上、6カ月以上の2型糖尿病歴、HbA1cが7.0〜10.0%、BMIが40kg/m2以下。薬物療法の条件は、メトホルミン単独、あるいはメトホルミンとSU薬、αグルコシダーゼ阻害薬、DPP-4阻害薬のいずれかとの併用による治療を3カ月以上行っており、インスリン療法は未導入とした。1030例が登録され、デグルデク群(773例)とグラルギン群(257例)に3対1となるように無作為に割り付けた。患者背景は、性別、人種、年齢、体重、BMI、糖尿病歴、ベースラインのHbA1c値、空腹時血糖値、併用薬の使用状況などにおいて、特に差はなかった。

 メトホルミンあるいはDPP-4阻害薬を処方されていた患者はそのまま以前の用法用量を維持し、他の経口糖尿病薬は中止した。グラルギンは各国の用法用量に従い1日1回同じ時間に、デグルデクは1日1回夕食時にそれぞれ注射することとした。両インスリン製剤の開始用量は10Uとし、朝食前に自己血糖測定(SMBG)した連続3日の平均値に基づき、SMBG値が70〜89mg/dLとなるように用量調節を週1回行った。

 52週間の試験完遂率は、デグルデク群が79%、グラルギン群が77%と両群ほぼ同等で、脱落理由も特に違いはなかった。

 HbA1cの変化を見ると、デグルデク群ではベースラインの8.2%が52週後は7.1%に、グラルギン群では8.2%が7.0%にそれぞれ低下し、両群のETD(estimated treatment difference)に有意差は認められず、デグルデグのグラルギンに対する非劣性が証明された。

 空腹時血糖については、デグルデク群の変化量は−67.7mg/dL、グラルギン群のそれは−59.5mg/dLで、デグルデク群からグラルギン群を引いたETDは−7.7mg/dL(95%信頼区間:−13.3〜−2.3、P=0.005)と有意な低下を示した。

 試験終了時のインスリン投与量は、デグルデク群が0.59 U/kg、グラルギン群が0.60 U/kgでほぼ同等だった。

 安全性の解析対象はデグルデク群766例、グラルギン群257例だった。確定低血糖の定義は、血糖値56mg/dL未満かつ他者の援助を必要とする重度のエピソードとした。試験期間全体の累積発現頻度を解析した結果、デグルデク群の1.52件/患者・年に対し、グラルギン群は1.85件/患者・年となり、ERR(estimated rate ratio)は0.82(同:0.64〜1.04、P=0.11)とデグルデク群の方が18%少なかった。

 夜間確定低血糖を午前0時1分から午前5時59分までの確定低血糖と定義し、その累積発現頻度を求めたところ、デグルデグ群は0.25件/患者・年、グラルギン群は0.39件/患者・年と、ERRが 0.64(同:0.42〜0.98、P=0.04)とデグルデク群で36%有意に少なかった。

 重度の低血糖の累積発生率は両群ともに少なかったが、デグルデグ群が0.003件/患者・年、グラルギン群が0.023件/患者・年で、ERRは 0.14(同:0.03〜0.70、P=0.02)とデグルデク群で86%有意に少なかった。

 Zinman氏は最後に「デグルデクはグラルギンと同等の治療効果を示すとともに、低血糖は少ない傾向を示し、夜間低血糖や重度の低血糖については有意に少なかった。毎日の注射を要するインスリン療法では、安全性と忍容性に対する配慮も重要ではないか」と語った。

(日経メディカル別冊編集)