大阪府立大学の今井佐恵子氏

 炭水化物の前に野菜を食べることで、2型糖尿病患者、耐糖能が正常な被験者(NGT)のいずれにおいても、食後の血糖変動幅を減らせることが示された。持続血糖測定システム(Continuous Glucose Monitoring System:CGMS)を用いたこの解析結果を、6月12日までフィラデルフィアで開催された米国糖尿病学会(ADA2012)で、大阪府立大学の今井佐恵子氏が発表した。

 2型糖尿病における血糖の大幅な変動は、細小血管および大血管の障害を促進すると報告されている。また、食後の血糖の急激な変化は、空腹時血糖やHbA1c値よりも強く、アテローム性動脈硬化症と関連する。

 そのため、食事をはじめとした安全で効果的な介入によって、血糖変動と低血糖を減らすことが望まれる。しかし、多くの糖尿病患者にとって、食生活を変更したり制限をするのは困難で、食後高血糖と血糖変動を抑える簡単な食事プランを考慮する必要がある。

 以前の研究で、2型糖尿病患者に対し、炭水化物の前に野菜を食べ、すべての食物を20回以上咀嚼するという食事のとり方の効果を調べたところ、血糖変動やHbA1c値が有意に減少することが確認されている。今回は、日本人の2型糖尿病患者19人(男性6人、65.5歳)とNGTの被験者21人(男性2人、29.8歳)を2群(A群とB群)に無作為に割り付け、炭水化物の前に野菜を食べることによる食後の血糖変動への影響を、CGMSを用いて評価した。

 計測は、CGMSで4日間(72時間)行った。試験食は、そのうち2日目と3日目に実施。A群は2日目に野菜を食べてから炭水化物を食べ、3日目には炭水化物を食べてから野菜を食べることとし、B群は2日目と3日目をA群の逆とした。

 野菜を先に食べる場合は、野菜を5分かけて食べた後、肉や魚などの主菜を食べ始め、野菜を食べ始めてから10分ほど経った時点でご飯などの炭水化物も食べる、という順序。野菜は、トマト、ほうれん草、ブロッコリーなどを1日500g摂るようにした。

 野菜を食べる順序の別で、2型糖尿病患者の血糖変動を見てみると、24時間血糖値の標準偏差(SD)は、野菜を先に食べた場合の30mg/dLに対し、炭水化物を先に食べた場合は43mg/dLだった。平均血糖変動幅(mean amplitude of glycemic excursions:MAGE)は78mg/dLに対して117mg/dL。最大血糖変動幅(largest amplitude of glycemic excursions:LAGE)は123mg/dLに対して170mg/dL。夕食2時間後の食後血糖(PPG)は163mg/dLに対して189mg/dL。野菜を先に食べた場合の方が、いずれも有意(P<0.01)に低下した。

 これ以外の指標についても、J-indexは32に対して38。朝食1時間後のPPGは172mg/dLに対して198mg/dL。昼食2時間後のPPGは160mg/dLに対して195mg/dLと、有意(P<0.05)に低下した。

 NGTの被験者においても、野菜を先に食べた場合の方が血糖の変動は減少。下記の指標が有意に低下した。SD(13mg/dL vs. 16mg/dL)、J-index(11 vs. 13)、MAGE(28mg/dL vs. 44mg/dL、いずれもP<0.01)。朝食1時間後のPPG(106mg/dL vs. 115mg/dL、P<0.05)、LAGE(57mg/dL vs. 82mg/dL)、昼食1時間後のPPG(101mg/dL vs. 132mg/dL)、夕食1時間後のPPG(103mg/dL vs. 129mg/dL、いずれもP<0.001)。

 これらの結果から今井氏らは、「2型糖尿病と耐糖能正常のいずれでも、炭水化物の前に野菜を食べるよう習慣づけることは、食後血糖の変動幅を減少する」と結論した。野菜を先に食べることで血糖値が減少する理由については、「炭水化物は野菜に含まれる食物繊維によって、後からゆっくりと消化されるため、食後に必要となるインスリンを減らせるということで、一部説明できる」とした。

 「野菜を先に食べる」という指導は、食後高血糖と血糖変動幅の低下につながる簡単な指導であり、「細小・大血管障害の予防にも有効な可能性がある」(今井氏)。会場からは「サプリメントで代わりにならないのか?」という質問が出て、「咀嚼も重要なポイントだと考えられるので、代わりとするのは難しいだろう」と答える一幕もあった。

(日経メディカル別冊編集)