2型糖尿病患者の入院中の血糖管理にはbasal-bolus療法が推奨されているが、退院後、自宅での血糖管理にどうつなげたら良いかはまだ検討されていない。米エモリー大学のGuillermo E. Umpierrez氏らは入院時HbA1cをもとに管理を層別化するアルゴリズムを考案し、多施設共同試験でその有効性を検討。低血糖イベントの発生は少なく、退院12週後までに入院時より有意に低い血糖値を達成できていた。6月8日からフィラデルフィアで開催されている米国糖尿病学会(ADA2012)で報告した。

 この検討はUmpierrez氏らが参加するBasal Plus Trialのパイロット試験という位置づけで行った。Basal Plus Trialはエモリー大など5施設から375例の2型糖尿病入院患者を対象に、持効型のインスリン グラルギンと超速効型のインスリン グルリジンを併用するBasal/Bolus療法群、グラルギンを基礎としてグルリジンを補充するBasal Plus療法群、従来のインスリン療法群の3群に割り付けて、前向きに追跡することになっている。

 Umpierrez氏らは今回、このうち224例を検討対象として解析を行った。退院時血糖管理アルゴリズムはHbA1cの値により7%未満、7〜9%、9%超の3群に分けて設定。HbA1c 7%未満では入院前の血糖管理をそのまま再開するが、HbA1c 7〜9%では入院前からの経口血糖降下薬に加えて入院中のグラルギン投与量の50〜80%を投与することとした。HbA1c 9%超では入院中と同量の基礎インスリンを続けながら経口血糖降下薬を再開、さらに入院中のグラルギン投与量の80〜100%を投与する―という設定だ。

 管理目標値は、空腹時血糖および食前血糖が70〜130mg/dL、HbA1c 7%未満とした。追跡期間は退院後3カ月。最初の1カ月は毎週、2か月目以降は2週間ごとに電話で血糖管理状況を聞きとり、インスリン用量の設定を指導した。退院後1カ月と3カ月には来院してもらい血糖管理を指導した。

 対象患者のHbA1cは、7%未満、7〜9%、9%超の3群にほぼ均等に分布していた。HbA1cが高い群ほど高齢で、入院前からインスリン療法を受けている傾向があったが、その他の背景に違いはなかった。入院中の血糖管理にBasal/Bolus療法が選択された割合はHbA1cが高い群ほど多かった。退院後の血糖管理は、HbA1cの低い群では経口血糖降下薬のみで行う患者が最も多かったが、HbA1cの高い群ではグラルギンやグルリジンが併用される患者が多かった。

 3カ月後、対象の平均HbA1cは入院時の8.67%から退院4週後に7.86%、12週後に7.26%へと有意に低下していた。

 HbA1cの群ごとに見ると、HbA1c 7%未満群では血糖状態に変化はなかったが、7〜9%群では入院時から退院4週後、12週後と段階的に有意な改善が認められた。HbA1c 9%超群ではさらに改善が顕著だった。

 血糖管理別の分析では、経口血糖降下薬にグラルギンを加えた群、またグラルギンとグルリジンを併用した群で段階的に有意な血糖降下が確認された。特にグラルギンとグルリジンの併用群では、入院時に11.1%と高かったHbA1cが退院後4週には8.78%へ、12週には7.99%へと、大幅に低下していた。

 安全性については、70mg/dL未満の低血糖が62例、40mg/dL未満の低血糖が7例で確認されたが、全体として少なく抑えられており、HbA1c値は退院後の血糖管理とアルゴリズムの設定に有用であることが確認された。

 一方、対象患者の入院理由が内科系か外科系かで分類し、血糖管理の推移を解析したところ、外科系患者では入院時HbA1c値が内科系より低く(8.1% vs. 9.0%)、退院4週後の血糖管理も優れる傾向があった。患者背景やインスリン用量、低血糖の発生に違いはなく、Umpierrez氏は、「外科系では血糖管理が不良だと手術ができないため、より厳しい指導が行われているのではないか」と述べている。

(日経メディカル別冊編集)