デンマークNovo Nordisk社のHanne L. Haahr氏

 超持効型インスリン製剤であるインスリン デグルデク(以下、デグルデク)は、1型糖尿病、2型糖尿病を問わず、投与開始から2〜3日で血清中濃度が定常状態に至ることが分かった。また、定常状態に到達するまでの時間は、患者ごとの投与量の違いと関連しないことも確認された。6月8日から12日まで米国フィラデルフィアで開催中の第72回米国糖尿病学会(ADA2012)で、デンマークNovo Nordisk社のHanne L. Haahr氏らが報告した。

 基礎インスリン療法の目的は、1日24時間にわたり血清中インスリン濃度を適正範囲内に確実に維持することにある。基礎インスリン療法で汎用される1日1回投与法では、持続力が24時間を超えないインスリンを用いると、血清中インスリン濃度の著明な減弱が日々繰り返されることで、血糖日内変動が大きくなってしまう。

 血糖値の安定的かつ持続的なコントロールと平坦化を実現するためには、1日1回投与する基礎インスリン製剤の効果が24時間以上維持される必要がある。そうしたインスリン製剤であれば、投与するたびに前投与と後投与の作用がオーバーラップするため、血清中インスリン濃度が安定的に保たれ、血糖のトラフ値とピーク値の比も縮小する。

 しかし、インスリンの導入時や用量調節の直後は、いずれのインスリン製剤であっても十分な血中濃度に達するまでには一定の時間を要する。そのため、用量調節の期間を適切に設定するためにも、インスリンの薬物動態を理解することが重要になる。

 デグルデクは血中濃度半減期が25時間に達し、臨床用量において42時間以上の持続的な血糖低下作用を示すことが報告されている。一方、初回導入時からsteady state(インスリン上昇後の定常状態)に達するまでに要する時間については、ほとんど知見がない。そこでHaahr氏らは、1型糖尿病および2型糖尿病の患者におけるデグルデクの1日1回投与により、血清中インスリン濃度が定常状態に達するまでの期間や、定常状態におけるピーク値とトラフ値の差などを検討した。

 検討方法は、これまでに実施されたデグルデクの3つの薬物動態学/薬力学(PK/PD)試験からデータを抽出し、定常状態までの時間を解析するというもの。今回用いた試験はいずれもデグルデクの1日1回皮下注射による無作為化二重盲検試験だった。1型糖尿病を対象とした2つの試験のうち、「T1DM-1」はデグルデク0.4 U/kgの12日間投与、「T1DM-2」は0.4 U/kg、0.6 U/kg、0.8 U/kgのいずれかの8日間投与、一方、2型糖尿病を対象とした試験「T2DM-3」は0.4 U/kg、0.6 U/kg、0.8 U/kgのいずれかの6日間投与だった。試験期間中は毎日、デグルデク投与前に血液を採取し、血清中のデグルデク濃度を測定していた。測定期間はT1DM-1が10日間、T1DM-2が6日間、T2DM-3が4日間だった。

 対象は、T1DM-1が27例(男性23例、年齢40.3±10.7歳、BMI 24.4±2.3kg/m2、糖尿病歴20.2±12.9年)、T1DM-2が66例(55例、36.9±10.4歳、24.9±2.4 kg/m2、17.6±9.5年)、T2DM-3が49例(40例、58.7±7.4歳、29.6±3.0 kg/m2、14.1±7.4年)。ベースラインのHbA1c(NGSP値)は順に7.8±1.1%、8.1±1.0%、7.6±0.9%だった。

 初回投与後、血清中のデグルデク濃度のトラフ値が、最終的な定常状態の90%を超えたと推察されるまでの時間を、定常状態に到達までの時間と定義した。

 解析の結果、デグルデクの血清中濃度は病型の違いを問わず、すべての患者において投与開始から2〜3日で定常状態に達した。また、投与量が異なる患者を対象にしたT1DM-2およびT2DM-3において、血清中のデグルデク濃度が定常状態に達するまでの時間は投与量と関連しないことも確認された。定常状態では、デグルデクの総曝露量は日々変化せず、日々のトラフ値も定常域に維持された。

 以上からHaahr氏は、「1日1回の投与で使用する持効型インスリン製剤では、血中濃度の半減期が重要であることが今回の検討で確認された。そのため、半減期が25時間であるデグルデクは有用と考えられるが、それでも定常状態に達するのに2〜3日を要することには留意してほしい」と語った。

(日経メディカル別冊編集)