北野病院糖尿病内分泌センターの藤本寛太氏

 ピオグリタゾンを投与した日本人の2型糖尿病患者663人を後ろ向き解析したところ、膀胱癌の発症は1.36%。ピオグリタゾン非投与の2型糖尿病患者と比べた膀胱癌発症のハザード比は1.753で、有意なリスク上昇は認められなかったことが示された。北野病院(大阪市北区)糖尿病内分泌センターの藤本寛太氏が、6月8日から米国フィラデルフィアで開催中の米国糖尿病学会(ADA2012)で発表した。

 ピオグリタゾン投与と膀胱癌発症の関係についてはこれまでに複数の報告がある。動物実験からは、ピオグリタゾンの高用量投与で膀胱癌の発症リスクが高まることが示されているが、大規模臨床試験では有意なリスク上昇は認められていない。また、日本における膀胱癌の発症率は欧米と比べて低いことも知られている。

 そこで、藤本氏らは、日本人2型糖尿病患者について、ピオグリタゾン投与が膀胱癌の発症率を上昇させるかについて検討した。

 対象は、同院の2型糖尿病患者2万1335人で、同院のデータベースから2000年から2011年のデータについて後ろ向き解析を行った。膀胱癌の発症は、同期間中にピオグリタゾンによる治療を行った後に発症した場合とした。

 解析の結果、対象全体の170人(0.80%)が膀胱癌を発症していた。

 ピオグリタゾンを投与された663人では、膀胱癌の発症は9人(1.36%)。ピオグリタゾンを投与されなかった2万672人では、161人(0.79%)だった。

 この結果、ピオグリタゾン投与による膀胱癌のハザード比は1.753。95%信頼区間は0.892-3.446で、有意なリスク上昇は認められなかった。

 ピオグリタゾン投与期間別に膀胱癌の発症率を見たところ、投与期間24カ月以上の患者(425人)では0.94%(4人)が発症(ハザード比1.21、95%信頼区間:0.45-3.28)。これに対し、ピオグリタゾン投与24カ月未満の患者(238人)では2.10%(5人)が発症(ハザード比2.73、95%信頼区間:1.11-6.72)。投与開始から短い期間の方が、発症リスクが高いことが示唆された。

 男女別に見ると、ピオグリタゾン投与群の男性の膀胱癌発症率は1.22%(6人)。女性は1.74%(3人)だった。

 これらの結果から藤本氏は、「ピオグリタゾン投与と膀胱癌発症との関係は否定できない」とコメント。今回の解析で有意なリスク上昇は示されなかったが、「今後さらに多くのデータから両者の関係を検証する必要がある」と指摘した。

(日経メディカル別冊編集)