University of South CarolinaのAvnish Tripathi氏。

 17歳以下の小児患者に第2世代抗精神病薬(Second Generation Antipsychotics:SGAs)を使用すると、2型糖尿病の発症リスクを増やす可能性があることが示された。さらに気分安定薬を併用すると、発症リスクがより高まる可能性があることが分かった。米国University of South CarolinaのAvnish Tripathi氏が、6月8日からフィラデルフィアで開催されている第72回米国糖尿病学会(ADA2012)で報告した。

 過去20年、小児へのSGAsの処方が大幅に増加している。一方で、SGAsは代謝性の副作用、特に体重増加との関連が指摘されており、副作用のプロファイルは薬剤ごとに異なる。Tripathi氏らは、小児患者におけるSGAsと2型糖尿病発生率の関係などを検討した。

 今回用いた後ろ向き解析のデータセットは、1996年1月から2006年12月までの11年間におけるサウスカロライナ州のメディケイドのデータから得た。対象は、毎年最低9カ月以上メディケイドの受給資格を有し、期間中に5つのSGAs(アリピプラゾール、ジプラシドン、クエチアピン、リスペリドン、オランザピン)のうち少なくとも1つを処方された17歳以下の小児とした。なお、個々の小児のSGAs投与開始時期を同定するに当たっては、メディケイドの記録でそれ以前にSGAsが24カ月以上投与されていないことを確認した。

 最終的に解析の対象となったのは4140例で、年齢中央値は11歳(四分位範囲:4-11)、男児が68%。人種構成については、42%が白人、41%が黒人、18%が他の人種だった。

 2型糖尿病を発症したのは4140例中176例(4.3%)で、発症の平均年齢は10.3歳だった。また、代謝障害の合併率は、過体重/肥満が20%、高血圧が7%、脂質異常症が4%だった。投与されていたSGAは、アリピプラゾール15%、ジプラシドン14%、クエチアピン29%、リスペリドン75%、オランザピン29%だった。併用薬の割合は、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI) 57%、セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI) 48%、精神刺激薬76%、気分安定薬46%だった。

 時間依存型共変量を用いた比例ハザード解析の結果、アリピプラゾール(調整ハザード比[aHR]:2.92、95%信頼区間[95%CI]:1.08-7.90)とジプラシドン(aHR:3.56、95%CI:1.61-7.89)は、SGAsを投与しない場合に比べて有意に高いリスクになると示された。また共変量のうち、2型糖尿病のリスクを高める因子として、男性より女性(aHR:1.78、95%CI:1.30-2.44)、白人よりも黒人(aHR:1.52、95%CI:1.07-1.25)、以前からの過体重/肥満(aHR:4.19、95%CI:2.87-6.11)、以前からの脂質異常症(aHR:3.33、95%CI:1.76-6.30)、気分安定薬の使用(aHR:1.64、95%CI:1.32-2.37)が挙がった。

 SGAs使用と2型糖尿病発症の関連をIPTW(Inverse Probability of Treatment Weighted)推定を用いる周辺構造モデル(Marginal Structure Model)で評価すると、ジプラシドン(調整相対リスク[aRR]:3.48、95%CI:1.37-8.83)とリスペリドン(aRR:1.64、95%CI:1.02-2.64)が、相対的にリスクを高める因子として示された。また、男性より女性(aRR:1.84、95%CI:1.30-2.61)、白人よりも黒人(aRR:1.56、95%CI:1.08-2.26)、以前からの過体重/肥満(aRR:4.98、95%CI:3.30-7.41)、気分安定薬の使用(aRR:1.62、95%CI:1.07-2.45)がリスクを高めることが分かった。

 Tripathi氏は今回の検討の限界点として、重要なリスク因子である食事、家族歴、喫煙、BMIに関する情報の不足を挙げた上で、「小児患者において、SGAsは2型糖尿病の発症リスクを増加させる可能性がある」と結論。SGAsと気分安定薬の併用で発症リスクがさらに高まる可能性を指摘した。「これらの知見は、小児患者、特に糖尿病発症の他の危険因子を有する小児患者へのSGAsを使用するにあたって、医療従事者が糖尿病への意識を高めることの重要性を改めて示した」とTripathi氏は語った。

(日経メディカル別冊編集)