新山手病院(東京都東村山市)の谷口由紀子氏

 ヒトGLP-1アナログ製剤であるリラグルチドは、体重減少が維持された2型糖尿病患者において、長期にわたって血糖日内変動を平坦化していることが明らかになった。また、持続血糖モニター(CGM)により測定した24時間平均血糖値などの指標からも平坦化の維持が確認された。6月8日から12日まで米国フィラデルフィアで開催中の第72回米国糖尿病学会(ADA2012)で、新山手病院(東京都東村山市)の谷口由紀子氏らが発表した。

 谷口氏らはCGMを用いて、リラグルチドが2型糖尿病患者において24時間の平均血糖値を減少させるだけでなく、食後高血糖の上昇も抑制することで、血糖値の日内変動を小さくすることを既に報告している。今回は、この血糖日内変動の抑制効果が長期にわたって維持されるのかどうか、さらには長期のリラグルチド投与が2型糖尿病患者のインスリン分泌にどのような影響を与えるかを検討した。

 対象は、血糖コントロール目的で入院した肥満を伴った2型糖尿病患者15例。入院後、食事療法あるいは食事療法とSU薬により、ある程度安定した血糖コントロールが得られた(食事後の血糖値が200mg/dLを超えなくなった)後、リラグルチドの投与を開始した。リラグルチドの投与は0.3mg/日から開始し、その後1週ごとに0.6mg/日、0.9mg/日と段階的に増加させ、退院後も0.9mg/日を維持した。CGMを用いた血糖測定は、リラグルチド投与開始前、リラグルチド0.3mg/日投与1週後、同0.6mg/日投与1週後、同0.9mg/日投与1週後、退院24週後にそれぞれ行った。

 患者背景については、男性が4例、女性が11例、年齢が60.3±13.6歳、入院時のBMIが28.6±4.9kg/m2、入院時の体重が70.6±14.2kg、入院時のHbA1c(JDS値)が7.98±1.50 %。治療内容は、リラグルチド単独投与が10例、リラグルチドとSU薬併用が5例だった。なお、リラグルチド単独投与の患者においては、75gブドウ糖負荷試験(OGTT)をリラグルチド投与開始前、リラグルチド0.9mg/日投与1週後、退院24週後に行った。

 リラグルチド投与に伴い、退院時の体重は約5kg減少し、その後も維持され、最終的に退院24週後には入院時より5.4kg有意に減っていた(P<0.001)。また、HbA1cは12週後まで減少傾向が続き、24週後には退院時より1.3%有意に低下していた(P<0.01)。

 血糖日内変動に関しては、リラグルチドの投与開始1週間でほぼ平坦になり、退院時に最も平坦化していた。退院24週後においても、この効果はほぼ保たれていた。

 CGMで測定した指標をリラグルチド投与開始前と24週後において比較すると、24時間に288回測定された血糖値の平均値や標準偏差、持続血糖測定値の曲線下面積(持続血糖測定値と24時間平均血糖値で囲まれる面積)は24週後に有意に減少していた(いずれもP<0.05)。平均血糖変動幅(mean amplitude of glucose excursion:MAGE)は減少が認められ、さらに低血糖であった時間はわずかに増えていたものの、高血糖であった時間は大幅に減っていた。

 これらを踏まえ、谷口氏は「少なくとも退院後も体重がきちんとコントロールされている2型糖尿病患者においては、リラグルチド投与に伴う血糖日内変動の平坦化が24週間にわたり維持されていた」と語った。また、75gOGTTの検討から、インスリン抵抗性が十分に改善されていない状況下において、例えば、血糖値が150mg/dL程度までしか低下していない場合、GLP-1製剤投与によりインスリン分泌が促進され続けることが分かった。そこで谷口氏は、「GLP-1製剤を投与する際は、インスリン抵抗性の存在に留意する必要がある」と強調した。

(日経メディカル別冊編集)