米ボストンBrigham and Women's Hospital、Harvard Medical SchoolのR. Preston Mason氏

 インスリンが大動脈および糸球体の内皮機能を改善し、酸化ストレスを軽減すること、そしてその効果は、中間型インスリン(NPH)と比較して、持効型のインスリングラルギン(以下、グラルギン)でより高いことが示された。米ボストンBrigham and Women's Hospital、Harvard Medical SchoolのR. Preston Mason氏(写真)らが、糖尿病モデルラットを用いて行った実験によって明らかになったもので、心血管疾患予防のためにも、インスリン治療により良好な血糖コントロールを保ち、正常な内皮機能を維持することの重要性が裏付けられた。6月に米サンディエゴで開催された米国糖尿病学会(ADA2011)で報告された。

 Mason氏らは、インスリンが良好な血糖コントロールを維持し、eNOS機能を改善することによって血管内皮機能障害を回復すること、またその作用は、持効型インスリンアナログ製剤のグラルギンにおいて、NPHよりも高いという仮説をたてた。ニコチン酸アミド・ストレプトゾトシン誘発による糖尿病モデルラットを作成して、この仮説を検証した。

 糖尿病モデルラットに、グラルギン4単位/kgを1日1回、またはNPHインスリン2単位/kgを 1日2回投与し、30日間飼育した後に屠殺して大動脈および腎糸球体の内皮細胞を採取し、正常ラット、未処置の糖尿病モデルラットと比較検討した。内皮細胞の機能をみるために、一酸化窒素(NO)の遊離を直接的に測定できる特殊なナノ技術(タンデムエレクトロメトリカルナノセンサー)を用いて、NOとフリーラジカル分子種の1つで酸化ストレスの度合いを示すパーオキシナイトライト(ONOO-)の測定を行った。

 その結果、空腹時血糖値は、未処置の糖尿病モデルラット(糖尿病群)が約480mg/dLだったのに対して、グラルギン投与群、NPH投与群ともに有意に低下していた(p<0.001)。特にグラルギン投与群では、正常ラットと同等の約100mg/dLまで低下しており、NPH投与群と比べて有意に低かった(p<0.05)。

 また、内皮細胞機能を表す指標として用いたNO/ONOO-は、大動脈内皮細胞においては、糖尿病群で約0.4だったのに対して、グラルギン投与群で約1.5、NPH投与群で約0.9といずれも有意に改善されていた(p<0.001)。さらに、NPH投与群とグラルギン投与群にも有意な群間差が認められた(p<0.001)

 糸球体内皮細胞のNO/ONOO-も、糖尿病群の約0.4に対して、グラルギン投与群では約2.0、NPH投与群では約1.1といずれも有意な改善がみられ(p<0.001)、大動脈内皮細胞と同様にNPH投与群とグラルギン投与群にも、有意な群間差が認められた(p<0.001)。

 Mason氏は、「これらの結果は、糖尿病患者の正常な血管内皮機能を維持するためには、血糖コントロールが最も重要となることを示すものだ。血管内皮機能の正常化のためには、中間型インスリンよりも持効型のインスリングラルギンがより有用である可能性がある」と結論した。

(日経メディカル別冊編集)