2型糖尿病患者における高血糖は、24時間にわたり健常者に比べ血糖上昇がみられる基礎高血糖(BHG:basal hyperglycemia)と、食後高血糖(PPHG:postprandial hyperglycemia)の2つの要素で構成される。個々の患者において、どちらの要素がその患者の高血糖の原因として大きいのかを知り、それに応じた薬剤を組み合わせることによって、より効果的な治療が可能となる。米ボストンJoslin Diabetes Center and Beth Israel Deaconess Medical Center のMedah Munshi氏らは、若年患者と高齢患者ではBHGとPPHGが高血糖に寄与する割合が異なり、適切な血糖コントロールを得るためには、年齢によって異なる治療戦略が必要である可能性を指摘した。6月28日まで米サンディエゴで開催された米国糖尿病学会(ADA2011)で発表した。

 血糖コントロール良好な2型糖尿病患者では、コントロール不良な患者よりもPPHGが高血糖に大きく寄与しているとされている一方、コントロール不良の患者においては空腹時高血糖やBHGが大きく寄与しているとされている。しかし、患者の年齢によって、BHGやPPHGの寄与度が異なるかどうかは、明らかにされていなかった。

 Munshi氏らは、成人2型糖尿病患者を対象とする第III相またはIV相のプロスペクティブ無作為化比較試験の中から、インスリングラルギンを中心とした6つの臨床試験(Gerstein 2006、Munshi 2003、Standl 2006、Janka 2005、 Bretzel 2008、Yki-Jarvinen 2006 )を解析した。これらの試験では、空腹時血糖値100mg/dL以下を目標に、インスリンの至適用量を週に1回は調節することとされていた。

 これらの登録患者のうち、登録時と24週後において、朝昼晩3食の前後と就寝時の7点における自己血糖測定値のデータが揃っていた1699人を抽出、65歳未満の若年患者群(平均年齢54.8歳、1190人)と65歳以上の高齢患者群(同70.1歳、509人)について、高血糖に対するBHGとPPHGの寄与する割合と、低血糖発作の頻度を解析、比較検討した。基礎高血糖は血糖値の推移を示すグラフ上の朝食前における血糖値100mg/dLと空腹時血糖値の差とし、食後高血糖は朝食前の空腹時血糖値以上の部分とした。そしてピアソン相関解析によって高血糖あるいはHbA1cに対する基礎高血糖の寄与度を算出した。

 対象患者の1026人(60.4%)がインスリングラルギンを投与されており、140人(8.2%)が経口血糖降下薬による強化療法、235人(13.8%)が中間型インスリン(NPH)、139人(8.2%)が混合型インスリン、159人(9.4%)が超速効型インスリンを投与されていた。

 登録時における高血糖へのBHGの寄与度は対象者全体では78%だった。そのうち、高齢患者群では75%であったのに対して、若年患者群では79%と有意に高かった(p<0.01)。

 グラルギンによる24週間の治療によって、HbA1c値は、両群ともに1.6%低下し、朝食前の空腹時血糖値は、若年患者群で71mg/dL、高齢患者群で64mg/dL低下した。24週後におけるBHGの寄与度は、両群ともに低下していたが、若年患者群(寄与度45%)では、高齢患者群(同38%)と比較して高かった(p<0.01)。

 若年患者群におけるBHGの寄与度は、登録時(r=0.08、p<0.01)、24週後(r=0.06、p=0.03)ともに、HbA1c値と相関していた。一方高齢患者群では、登録時(r=0.05、p=0.26)、24週後(r=0.03、p=0.48)ともに、HbA1c値との有意な相関は認められなかった。またPPHGは、いずれの患者群においても、HbA1c値と相関していなかった。

 治療期間中に748人の若年患者(63%)、287人の高齢患者(56%)で、1回以上の症候性低血糖発作が認められた。測定値で確認された低血糖(50mg/dLまたは70mg/dL未満)や、夜間における低血糖の訴えは、若年患者で多かったが、両群間に有意差はなかった。

 以上のように、若年患者、高齢患者の高血糖については、いずれも治療開始24週後に比べて登録時においてBHGの寄与度が高かった。しかし、高齢患者においては、若年患者と比較してBHGの寄与度が比較的少なかった。Munshi氏らはこれらの成績について「グラルギンをはじめとしたインスリン治療は,年齢を問わず高血糖への寄与度が高い基礎高血糖を大幅に改善することが示された。一方で、高血糖におけるBHGおよびPPHGが寄与している割合が、若年患者と高齢患者で異なることから、良好な血糖コントロールを得るためには、年齢に応じた治療戦略が必要であることが示唆された」と結論した。

(日経メディカル別冊編集)