英国ニューキャッスル大学のPhilip Home氏

 妊婦の糖尿病に対しては、インスリン療法が標準治療となる。だが、古くからあるレギュラーインスリンや中間型インスリン(以下、NPH)に比べ、持効型インスリンアナログ製剤の妊婦や新生児への安全性を検討した報告は少ない。英国ニューキャッスル大学のPhilip Home氏(写真)らは、メタ解析によってインスリングラルギン(以下、グラルギン)の安全性を検証。FDAの薬剤胎児危険度分類カテゴリーBに位置するNPHと同等であることを明らかにした。この結果は、6月28日まで米サンディエゴで開催された米国糖尿病学会(ADA2011)で報告された。

 今回のメタ解析の対象となった試験は、妊娠糖尿病、もしくは妊娠前から1型あるいは2型糖尿病を罹患している妊婦に対してグラルギンとNPHが用いられたケース・コントロール試験とコホート研究、無作為化比較試験だ。

 Home氏らは、1980〜2010年に報告された研究のうち49報をレビューし、対照群(NPH群)の設定がないものや、グラルギン群、NPH群それぞれにおける妊婦と新生児の治療成績の記載がないもの、各群の患者数が15人未満のもの、治療開始時期や治療期間が明示されていないものを除くという条件を適用した結果、8試験のデータの解析が行われた。

 8試験はいずれも観察研究で、7つはレトロスペクティブ、1つはプロスペクティブな検討だった。469例が妊娠前から診断された1型あるいは2型糖尿病(うちグラルギン群232例、NPH群237例)、233例が妊娠糖尿病(グラルギン群99例、NPH群134例)の患者だった。

 グラルギン群とNPH群の妊婦の背景因子を比較すると、調整前の平均罹病期間に群間差はなかったが(10.2年 対 10.3年)、メタ解析ではNPH群の方が糖尿病罹病期間がグラルギン群に比べて1年以上有意に長かった。年齢(30.3歳 対 30.5歳)、妊娠前の体重(82.0kg 対 80.1kg)、妊娠前のBMI(31.0 対 29.7)、およびそれぞれのメタ解析結果には有意な差はなかった。

 周産期の母体のアウトカムについては、重篤な低血糖の発現は、グラルギン群が207人中10人、NPH群が265人中20人で、発現率に有意な差は認められなかった(オッズ比:0.84、p=0.98)。また、子癇前症の発現率(26/331 対 40/371、同:0.55、p=0.18)や帝王切開分娩の頻度(199/284 対 231/324、同:1.04、p=0.82)にも差はみられなかった。

 一方、新生児のアウトカムについては、高ビリルビン血症(58/272 対 60/314、オッズ比:0.93、p=0.84)、低血糖(58/304 対 62/346、同:0.99、p=0.96)、呼吸窮迫症候群(24/261 対 15/288、同:1.62、p=0.17)、先天奇形(17/237 対 23/271、同:0.78、p=0.50)、4000g超の巨大児(37/157 対 39/198、同:1.20、p=0.50)などの発現頻度もすべて両群で同等だった。

 これらの結果より、糖尿病を罹患している妊婦および新生児に対するグラルギンの安全性は、FDAの薬剤胎児危険度分類カテゴリーBに位置するNPHと変わらないことが示唆された。Home氏は、「グラルギンは妊婦の血糖コントロールのための有用なツールとなるだろう」と述べ、「いくつかの項目についてはオッズ比の95%信頼区間が幅広いことから,今後さらなるデータ集積や解析が望まれる」と付け加えた。

(日経メディカル別冊編集)