フランスInternational Prevention Research InstituteのPeter Boyle氏

 2型糖尿病患者に対し、インスリングラルギン(以下、グラルギン)を投与しても、他のインスリンを投与した場合と比べて発癌リスクは増大しないことが、メタ解析の結果明らかになった。フランスInternational Prevention Research InstituteのPeter Boyle氏(写真)らが、これまでに発表された研究結果を基にメタ解析を行い明らかにしたもので、6月28日まで米サンディエゴで開催された米国糖尿病学会(ADA2011)で発表した。
 
 Boyle氏らは、グラルギン投与中の糖尿病患者と発癌リスクに関連する37の試験の結果について、変量効果モデルによるメタ解析を行った。その内訳は、国レベルのデータベースによる5つのコホート試験、31件の無作為化比較対照試験、1つのケース・コントロール試験だった。

 その結果、グラルギン投与群の非投与群に対する癌発症に関するオッズ比は、0.95(95%信頼区間:0.82‐1.12)と、有意な増加は認められなかった。また、コホート試験のみについて行ったメタ解析では、同オッズ比は0.92(同:0.79‐1.06)、それに無作為化比較対照試験を加えた結果では、同オッズ比は0.92(同:0.81‐1.05)と、いずれも有意差はなく、むしろリスクは低下傾向にあった。

 さらに、検出感度の分析を行ったところ、37試験のうちいずれか1つの試験結果を除いても、解析結果には影響はなかった。また仮定として、グラルギン投与群の非投与群に対する、癌発症に関するオッズ比が10という、新たな試験結果が今後出てきた場合を想定し、メタ解析を行った。その結果もまた、グラルギン投与群で発癌リスクの増大は認められなかった。

 Boyle氏らは、乳癌の発症リスクについても37の試験の解析を行った。その結果、グラルギン投与群の、非投与群に対する乳癌発症に関するオッズ比は、1.13(95%信頼区間:0.78‐1.64)と、有意な増大はなかった。乳癌においても同様に、グラルギン投与群の乳癌発症に関するオッズ比を10とする、仮想の試験結果を盛り込んで分析を行ったが、グラルギン投与群における乳癌発症リスクの増大は認められなかった。

 Boyle氏は、「糖尿病患者に対するグラルギン投与が、他のインスリンと比較して発癌リスクを増大しないことを、非常に強く再確認できた結果だと思われる。医師や患者を安心させる知見を示すことができた」と結論した。仮想試験の結果を盛り込んだ点についても、「今後、グラルギン投与による発癌リスクの増大を示す試験結果が発表されても、あわててメタ解析をやり直さなくてもいいだろう」と語った。

(日経メディカル別冊編集)