Vinzentius-Krankenhausr(ランダウ、ドイツ)のS. Kress氏

 新たなインスリン治療レジメンや、新たな経口血糖降下薬、注射剤などが登場する中でも、2型糖尿病患者の大血管障害、細小血管障害のリスクは、依然として高い。Vinzentius-Krankenhausr(ランダウ、ドイツ)のS. Kress氏(写真)らは、ドイツの実臨床データベースのレトロスペクティブな解析によって、超速効型インスリン グルリジン(以下、グルリジン)が、速効型ヒトインスリン(以下、速効型インスリン)と比較して、大血管障害、細小血管障害のリスクを約20%低下させることを、6月24日から28日まで米サンディエゴで開催された米国糖尿病学会(ADA2011)で報告した。

 Kress氏らは、ドイツの50万7125人におよぶ糖尿病患者の実臨床データベースから、速効型インスリン(1万1157人、平均年齢65歳)、またはグルリジン(952人、同61歳)を投与中の40歳以上の患者を抽出。2004年〜2010年3月の間で治療開始後3.5年の追跡期間における大血管障害、細小血管障害の発症率を比較検討した。治療開始後6カ月以内の発症は、除外した。

 治療開始時における両群の患者背景は、平均年齢(グルリジン群:60.7歳 対 速効型インスリン群:64.7歳)、罹病期間(同2.6年 対 1.6年)、個人保険加入率(同9.8% 対 3.5%)、旧西ドイツ地域に居住(71.5% 対 68.2%)などで有意差が認められた(p<0.05)。

 また既存の治療薬では、ビグアナイドとアカルボースなどほぼすべての経口血糖降下薬でグルリジン群で有意に多かった(p<0.05)が、SU薬は両群間に差はなかった。また、持効型インスリンアナログはグルリジン群で、中間型インスリンは、逆に速効型インスリン群で有意に多かった(p<0.05)。

 合併症として末梢血管疾患、高血圧、脂質異常症、うつ病、腎障害などが、速効型インスリン群に比べグルリジン群で有意に高かった((p<0.05))
 
 Kress氏らは、背景因子(年齢、性別、罹病歴、健康保険、居住地域、糖尿病専門医による治療、高血圧、高脂血症、うつ病、併用薬の内訳など)をすべて補正した上で、大血管障害、細小血管障害発症のハザード比を算出した。大血管障害の解析時には、治療開始時における細小血管障害の有無、細小血管の解析時には治療開始時における大血管障害の有無についても補正した。

 解析の結果、大血管障害の発症率は、グルリジン群で48.3%と、ヒトインスリン群の57.2%に比べ、有意に低かった(p<0.0281)。また、細小血管障害でも同様に59.9%対85.8%と有意に低かった(p<0.0022)。

 大血管障害および細小血管障害全体のリスクは、グルリジン群において約20%低いことが明らかになった(p<0.05)。特に冠動脈疾患ではハザード比0.78(95%信頼区間:0.62-0.99)と有意なリスク低下を認めた。また心筋梗塞リスクも、ハザード比0.66(同:0.43-1.02)と有意差はなかったもののグルリジン群で低い傾向が認められた。さらに糖尿病性神経症リスクは、ハザード比0.74(同:0.58-0.93)とグルリジン群で有意に低かった(p<0.05)。

 以上の2型糖尿病患者の実臨床におけるレトロスペクティブなデータ解析によって、追加インスリンを併用する場合は、速効型インスリンと比較してグルリジンは、大血管、細小血管障害のリスク低下を期待できる可能性が示唆された。

 Kress氏らは、「グルリジンは、心血管疾患のリスク因子となる食後高血糖に対して高い効果を示す。食後における微小循環を保持するとともに、内皮細胞機能を正常に保つ作用を有するためではないか」と考察した。さらに、同研究がレトロスペクティブな検討で、追跡期間が3.5年と比較的短いことなどから、今回の成績については、「追跡を続けるとともに、無作為化試験を行って確認すべき重要な知見と考えられる」との見解を示した。

(日経メディカル別冊編集)