東海大学腎内分泌代謝内科の田中栄太郎氏(写真右)と共同演者の豊田雅夫氏(写真左)

 透析患者インスリン療法を、中間型インスリンや混合型インスリンから、グラルギンに切り替えることで、重篤な低血糖の発現を懸念することなく、空腹時血糖値、HbA1c値の改善が得られることが示された。東海大学腎内分泌代謝内科田中栄太郎氏(写真)らが行った試験で明らかになったもので、6月24日から28日まで米サンディエゴで開催された米国糖尿病学会(ADA2011)で報告された。

 ほとんどの経口血糖降下薬は、透析患者には禁忌となっており、インスリン療法が標準治療となる。中間型インスリンや混合型インスリンによる治療で血糖コントロールが不十分にもかかわらず、重篤な低血糖発作を長期にわたり高頻度に起こす透析患者は少なくない。透析患者では、腎不全によりインスリン代謝が低下し、糖新生機能が損なわれていることから、空腹時などにこれらのインスリン製剤の作用のピークが重なると、重篤な低血糖発作を起こすことになる。

 田中氏らは、これまでの中間型インスリンや混合型インスリンを、明らかな作用のピークのみられない持効型のインスリングラルギンに切り替え、3カ月後の血糖コントロール状況、低血糖の発現頻度を切り替え前と比較検討した。 

 対象は、中間型インスリンを用いたBasal-Bolus療法、もしくは混合型インスリンによって治療を受けている、糖尿病性腎症により透析導入に至った患者12人(男性8人)。切り替え時の平均年齢は66.0歳、糖尿病罹病期間は28.4年で、透析治療期間は6.7年だった。

 その結果、空腹時血糖値は、グラルギンに切り替え前の190.4mg/dLから、3カ月後に116.4mg/dLと、有意に低下した(p<0.001)。HbA1c値は、7.3±1.1%から、切り替え後2カ月時点で6.7±0.5%と有意に改善し(p<0.05)、3カ月後も6.7±0.9%と維持されていた(p=0.0011)。

 低血糖の発現頻度は、投与前の週当たり1.77回から、投与3カ月後には同0.10回へと、有意に減少した(p=0.020)。1日当たりのインスリン投与量には、有意な変化はなかった。

 これらの結果から、透析患者に対するグラルギンによる治療は、中間型インスリンや混合型インスリンによる治療に比べて低血糖の発現頻度を有意に減少させ、良好な血糖コントロールをもたらすことが示唆された。田中氏は、「インスリン投与回数を1日1回に減らすことができた患者もあり、安定した血糖降下作用を発揮するグラルギンによる治療は、患者QOLの向上につながる可能性もある」と語った。

(日経メディカル別冊編集)