プラハ・Charles UniversityのMilan Kvapil氏(写真右)

 持続血糖測定システムCGMS)を用い、中間型インスリン(以下、NPH)とインスリングラルギン(以下、グラルギン)による2型糖尿病患者の血糖日内変動への影響を検討したところ、グラルギンはNPHと比較して低血糖の増加を伴わずに高血糖を呈する層を減少させ、血糖変動性も減少させたことが示された。プラハ・Charles UniversityのMilan Kvapil氏(写真)が、6月24日から28日まで米サンディエゴで開催された米国糖尿病学会(ADA2011)で発表した。

 2型糖尿病治療の目的は、厳格な血糖コントロールにより合併症を予防することだが、多くの臨床試験が示すように、HbA1c値だけでは血糖状況を十分にとらえることはできない。近年、血管内皮機能障害のリスク因子とされる血糖日内変動を指標に加えることで、合併症の発症リスクをより確実に予測することできるという報告がある。

 Kvapil氏らは、CGMSを用いて、チェコ国内の多施設でプロスペクティブ・オープンラベルによる臨床試験を実施。NPHからグラルギンに変更した場合の、血糖日内変動、低血糖発作などへの影響を比較検討した。

 対象は、登録前にNPHによる治療を最低2カ月間の治療を受けている2型糖尿病患者。経口血糖降下薬は、メトホルミン最低1.7g/日にSU薬またはグリニド薬を併用していた。今回の解析対象は116人で、男性が51.7%(60人)だった。平均年齢61.8歳(33歳-77歳)。罹病期間が12.3年、BMIが31.7だった。

 登録時点から4週間、既存のNPHを継続し、4週後時点で72時間のCGMを実施した。その後、NPHをグラルギンに変更し、12週間追跡した。グラルギンの投与量は、NPHが1日1回投与の場合は同量、2回の場合には約20%減量した。空腹時の目標値99.0mg/dL未満を達成できなかった場合は、3日置きにグラルギン2単位の増量を可とする積極的な治療で、12週間後に2回目の72時間CGMを実施した。

 その結果、1日当たりのインスリン量は、NPHの18.5単位(0.2単位/kg)から、グラルギンへの切り替え後では29.7単位(0.3単位/kg)へと有意に増加した。

 72時間CGMの結果から、グラルギンへの切り替えによる血糖値の日内変動をAUCで評価したところ、血糖低値(59.4mg/dL以下、70.2mg/dL以下でそれぞれ解析)にある層のAUCは、グラルギンへの切り替え前後で変化がなかった。血糖高値(135.0mg/dL以上、180.0mg/dL以上、270.0mg/dL以上でそれぞれ解析)の層のAUCは、グラルギンへの切り替え前に比べて有意に減少していた(各p<0.0001、p=0.0003、p=0.0003)。

 血糖値によって、グラルギン切り替え前後のAUCの差(mg/dLh)を検討したところ、59.4mg/dL以下の血糖低値の時間帯では、+22.7、70.2mg/dL以下では+29.2だった。70.2〜135.0mg/dLの適正な血糖値の層におけるAUCの差は、+278.6だった。135.0mg/dL以上の血糖高値の層では、-789.8mg/dLh、180.0mg/dL以上では−704.5、270.0mg/dL以上では−277.7だった。

 総AUCは、グラルギン切り替え前の212.8mg/dLhから、186.0mg/dLhへと有意に低下した(p<0.0001)。

 一方、対象患者の1日6回(毎食の前後)自己測定血糖値を比較したところ、グラルギンへの切り替えによる3カ月間の治療によって、すべての測定時間での低下が認められた。平均血糖値は、切り替え前の164.9mg/dLから138.8mg/dLへと有意に低下した(p<0.0001)。

 血糖値が59.4mg/dL、70.2mg /dL以下の低値にあった層は、切り替え後も変化がなかったが、血糖高値(135.0mg/dL以上)の層は、切り替え後に有意に低かった(平均値の差が、135.0mg/dL以上では−13.8%、p<0.0001、180.0mg/dL以上で11.6%、p=0.0004、270.0mg/dL以上で−3.7%、p=0.0004)。低血糖発作の発現頻度は、グラルギンへの切り替え前後で差はなかった。

 これらの結果からKvapil氏は、「NPHからグラルギンに切り替え、空腹時血糖値99mg/dLを目指して増量した積極的な治療よって、低血糖発作の増加を伴うことなく、高血糖が改善し、血糖変動性も減少した。対照群のないオープンラベルの試験だが、この結果は2型糖尿病患者に明らかなベネフィットをもたらすだろう」と結論付けた。

(日経メディカル別冊編集)