Dallas Diabetes and Endocrine Center のJulio Rosenstock氏

 多くの2型糖尿病患者は、経口血糖降下薬による血糖コントロールができずにインスリン治療が必要となる。しかし、どのようなレジメンでインスリン導入を開始するのかのコンセンサスは得られていない。Dallas Diabetes and Endocrine Center のJulio Rosenstock氏(写真)らは、BasalインスリンにBolusとして段階的に超速効型インスリンを追加する2種類のレジメンの安全性と有効性を、混合型インスリン製剤1日2回投与と比較検討するAll to Target試験を実施。その成績を6月24日から米サンディエゴで開催されている米国糖尿病学会(ADA2011)で報告し、超速効型インスリンを1回のみ追加投与するレジメンが有用となる可能性を示した。

 All to Target試験は、2〜3剤の経口血糖降下薬の投与にもかかわらず血糖コントロール不良の2型糖尿病患者989人を対象とし、60週間にわたり多施設で同時期に行われた無作為化オープンラベル試験である。1日2回の混合型インスリン製剤によるレジメン群と、インスリングラルギンをベースにしたBasalインスリンに、Bolusインスリンとして超速効型のインスリングラルジンを段階的に追加するレジメン群(1日1回までと、3回まで可の2群)における血糖管理状況、低血糖発現率などを比較検討した。

 対象患者の中から、罹病歴が2年以上で、BMIが45未満、登録時のHbA1c値が7.5%超(無作為化時点で7.0%超)、1年以内に1週間を超えるインスリン治療歴がない582人を抽出した。これらの患者を(1)混合型インスリンを1日2回投与する群(PM-2群、 n=192)、(2)Basalにグラルギン、Bolusとしてグルリジンを1回のみ投与する群(G+0-1群、n=189)、(3)同様にグルリジンの投与回数(3回まで)を段階的増やす群(G+0-3群、n=191)に無作為に割り付け、60週間追跡した。なお、グルリジンは12週ごとに、HbA1c値の改善が見られない場合にのみ追加した。空腹時血糖値(FPG)または食前血糖値が100mg/dL未満となるようインスリン投与量を調整した。

 主要評価項目は、PM-2群に対するG+0-3群の優位性(試験終了時のHbA1c値が7%未満を達成した患者割合)、G+0-1群の非劣性(試験開始時からのHbA1c値の低下度)とした。副次的評価項目は、空腹時血糖値、低血糖発現率、低血糖の発現なくHbA1c値が7%未満を維持できた期間、1日当たりの総インスリン量、体重変化とした。

 試験開始時の患者背景は、平均年齢54歳、56%が男性で、BMIが33.2、罹病歴が平均9.3年だった。平均HbA1c値が9.4%、空腹時血糖値は200mg/dLで、3分の1の患者が経口血糖降下薬を2剤以上投与されていた。SU剤とメトホルミンの組み合わせによる併用が49.5%と最も多く、他はすべてチアゾリジン系薬剤が入った組み合わせだった。より後期でより進行した治療困難な患者の集団であることがうかがわれた。

 その結果、試験終了時点で空腹時血糖値は、PM-2群で63mg/dL、G+0-1群で80 mg/dL、G+0-3群94mg/dLといずれも大きく低下したが、G+0-3群とPM-2群には有意差が認められた(p<0.01)。

 HbA1c値の低下は、PM-2群の1.8%に比べ、G+0-1群で2.1%と改善度が高く(p=0.06)、G+1-3群では2.2%と有意な低下(p<0.01)を認めた。HbA1c値が7%未満を達成した患者の割合は、PM-2群の39%に比べて、G+0-1群49%(p<0.025)、G+0-3群45%(p<0.05)と有意に高かった。

 低血糖(50mg/dL未満)の発現率は、総インスリン量、空腹時血糖値、体重にかかわらずPM-2群で高かった。PM-2を1とした場合の低血糖発現率は、G+0-1群0.43、G+0-3群0.46(ともにp<0.001)と、Basalインスリンのグラルギンに、Bolusインスリンのグルリジンを段階的に追加する2群の方が、低血糖リスクが低いことが示唆された。低血糖の発現がなくHbA1c値が7%未満を達成できた患者の割合も、PM-2群14%に比べ、G+0-1群とG+0-3群で有意に高かった(ともに24%、それぞれp<0.05、p<0.01)。

 体重変化は、試験終了時でPM-2群の6.9kg増に比べ、G+0-3群は7.2kg増と大きかったが有意差には至らなかった。G+0-1群が5.2kg増で最も小さかった。いずれの群でも体重増が認められたことについてRosenstock氏は、「50%以上の患者がチアゾリジン系薬剤を投与されていたことが影響したのではないか」としている。

 以上の結果から、グラルギンをBasalインスリンとして、1日3回まで段階的にグルリジンの投与回数を増やす段階的療法の、混合型インスリン2回投与に対する優位性は、わずかに認められなかった。しかし、1日1回までのグルリジンを追加投与する治療の非劣性は証明された。

 Rosenstock氏は、「血糖コントロールや低血糖発現率などの結果を考慮すれば、グラルギンにグルリジンを1回のみ追加投与する治療は、2型糖尿病患者に対する混合型インスリン製剤1日2回投与からの切り替えを検討すべきレジメンと思われる」として講演を結んだ。

(日経メディカル別冊編集)