九州大学大学院・環境医学の平川洋一郎氏

 空腹時血糖異常耐糖能異常の人は、そうでない人に比べ、癌死亡率がそれぞれ約1.5倍に増大することが分かった。これは、九州大学大学院・環境医学の平川洋一郎氏(写真)らが、2500人規模で行った前向きコホート試験「久山町スタディ」の結果明らかにしたもの。6月28日まで米サンディエゴで開催されている米国糖尿病学会(ADA2011)で発表した。

 これまで、糖尿病患者については、癌死亡率が増大することは知られていたが、空腹時血糖異常(impaired fasting glucose; IFG)や耐糖能異常(impaired glucose tolerance; IGT)の人について、癌死亡リスクが増大するかどうかは不明だった。

 平川氏は、「糖尿病の前段階の人の癌死亡リスクが、そうでない人に比べて高くなるとは考えていたものの、1.5倍という数字は予想より大きかった」としている。

 同研究グループは1988年、在宅の40〜79歳、2438人について、75g経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)を行い、空腹時血糖値と糖負荷後2時間血糖値を調べ、その後2007年まで19年間追跡して、癌の死亡について比較した。被験者のうち男性は1054人、女性は1384人、平均年齢はそれぞれ57.2歳と57.8歳だった。

 試験開始時の空腹時血糖値(5.6mmol/L未満、5.6〜6.0mmol/L、6.1〜6.9 mmol/L、7.0 mmol/L以上)と糖負荷後2時間血糖値(6.7 mmol/L未満、6.7〜7.7 mmol/L、7.8〜11.0 mmol/L、11.1 mmol/L以上)に応じて、それぞれ被験者を4群に分類した。

 また、空腹時血糖値が6.1mmol/L未満で糖負荷後2時間血糖値が7.8mmol/L未満を正常耐糖能、空腹時血糖値が5.6以上6.9mmol/L未満で糖負荷後2時間血糖値が7.8mmol/L未満を空腹時血糖異常、空腹時血糖値が7.0mmol/L未満で糖負荷後2時間血糖値が7.8以上11.0mmol/L未満を耐糖能異常、空腹時血糖値が7.0mmol/L以上で糖負荷後2時間血糖値が11.1mmol/L以上を糖尿病、とそれぞれ定義した。

 癌死亡率については、年齢、性別、体格指数、喫煙の有無、総コレステロール値などによって補正を行った。

 その結果、正常耐糖能群と比べた癌死亡に関するハザード比は、空腹時血糖異常群が1.49(p=0.02)、耐糖能異常が1.52(p=0.03)となり、糖尿病では2.10(p<0.001)だった。

 また、空腹時血糖値や糖負荷後2時間血糖値が高い群では、低い群に比べ、癌死亡率が高率であることも分かった。具体的には、空腹時血糖値が5.6mmol/L未満の群に比べ、6.1〜6.9mmol/Lの群では、癌による死亡に関するハザード比が1.89で、7.0mmol/L以上では同ハザード比は2.06と大幅に増大した(いずれもp<0.001)。糖負荷後2時間血糖値が11.1mmol/L以上の群では、6.7mmol/L未満の群に比べ、癌による死亡に関するハザード比は1.99だった(p<0.001)。

 癌の部位別に見てみると、空腹時血糖値が高い群では胃癌が、糖負荷後2時間血糖値が高い群では肝臓癌と肺癌が、それぞれ高率だった(いずれもp<0.05)。

 平川氏は、この結果を受けて、空腹時血糖異常や耐糖能異常の人に対する癌予防策として、「ライフスタイルや体重のコントロールなど、他の癌リスク因子を抑える努力が必要だ」と語った。

(日経メディカル別冊編集)