国立国際医療研究センター病院の能登洋氏

 2型糖尿病患者でメトホルミンを服用している人は、そうでない人に比べ、癌発症リスクが約4割、癌死亡リスクが約3割減少していることが分かった。国立国際医療研究センター病院能登洋氏(写真)らがメタ解析で明らかにしたもので、6月24日から米サンディエゴで開催されている米国糖尿病学会(ADA2011)で発表した。

 能登氏らは、メドラインとコクラン・ライブラリの論文データベースを用い、2011年4月までに収録された、メトホルミン、糖尿病、癌などに関する研究を検索した。その中から、20試験について定性的レビューをし、その中から3つのコホート試験と、2つのケース・コントロール研究についてメタ解析を行った。年齢、性別、喫煙の有無、肥満などについては、補正を行った。

 被験者で2型糖尿病の合計7万1851人のうち、癌発症が報告されたのは3184人(3つのコホート試験の罹患率は4.1%)だった。3つのコホート試験の2型糖尿病患者(1万9832人)のうち癌で死亡したのは4.5%だった。

 メトホルミン服用の有無で解析したところ、服用者の非服用者に対する癌発症に関する統合リスク比(RR)は、0.58(95%信頼区間:0.45‐0.76)、全ての癌による死亡に関する統合リスク比は0.67(同:0.51‐0.87)と、いずれも服用者群で有意に低かった。

 癌の部位別に見てみると、膵臓、大腸・結直腸癌、肺癌の発症リスクについては、それぞれ2以上の試験で、メトホルミン服用者に有意な減少が認められた(リスク比:0.2〜0.67)。

 メトホルミンと癌リスク減少のメカニズムについて能登氏は、「血糖値を下げ、高インスリン血症や低血糖を軽減することに加えて、癌発症遺伝子に作用する可能性がある」としている。これまでの研究から、メトホルミンには、AMP活性化プロテインキナーゼ(AMPK)を活性化する可能性が示唆されている。

 同氏はまた、糖尿病の患者は癌の罹患率が高いことが知られているため、その予防は重要であるとし、「メトホルミンによって血糖値がコントロールできる人については、同薬を第1選択薬として使うべきだ」とした。

(日経メディカル別冊編集)