米Wake Forest大学医学部のChristina Hungenschmidt氏

 臨床前心血管疾患2型糖尿病は、認知機能低下の強力な予測因子であることが分かった。糖尿病心臓研究(The Diabetes Heart Study)のサブ解析の成果で、米Wake Forest大学医学部のChristina Hungenschmidt氏(写真)らが、6月24日から米サンディエゴで開催されている米国糖尿病学会(ADA2011)で発表した。

 2型糖尿病は、認知機能の低下あるいは認知症のリスク上昇と関係があることが知られている。しかしながら、その生理学的機序の詳細は、いまだに明らかになっていない。原因としては、グルコース調節、血管疾患および遺伝などの側面から検討が進んでいる。

 糖尿病心臓研究は、糖尿病と血管疾患の遺伝学研究のために設計されたもの。糖尿病(34歳以上で発症し治療中)である兄弟に参加してもらい、また、糖尿病患者である兄弟が少なくとも2人いた非糖尿病の兄弟にも登録してもらった。

 今回の検討の目的は、登録時の臨床前心血管疾患..と2回目の診察時のDSSTスコアを検証することで、臨床前心血管疾患.と糖尿病が認知機能に及ぼす影響について明らかにすることだった。対象者は、2型糖尿病患者351人、非糖尿病被験者100人の計451人。2型糖尿病群は、男性46.35%、平均年齢67.84±8.50歳、BMI32.36±6.65kg/m2、糖尿病歴16.83±6.70年、HbA1c7.49±1.34%、空腹時血糖144.84±55.99mg/dLなどだった。一方、非糖尿病群は、男性34.00%、平均年齢66.32±9.99歳、BMI28.75±6.04kg/m2、HbA1c5.52±0.42%、空腹時血糖92.83±14.52mg/dLなどだった。

 登録時の心臓の状態は、CTにより冠動脈石灰化と頸動脈石灰化および頸動脈内膜中膜厚を測定することで評価した。3〜10年後にフォローアップを行い、主要アウトカムとして、数字と記号の置き換え作業(DSST)の成績をみるなどの一連の認知機機能試験を実施した。

 解析の結果、2型糖尿病と臨床前心血管疾患.を評価する3つの検査値(冠動脈石灰化、頸動脈石灰化および頸動脈内膜中膜厚)は、年齢、性別および教育水準とともに、DSST成績の重要な予測因子であることが明らかになった。たとえば、糖尿病群では、DSST成績が登録時に比べて−3.62(p=0.006)となり、また冠動脈石灰化を認めた場合は−0.68(p=0.009)、頸動脈石灰化を認めた場合は−0.82(p=0.009)、頸動脈内膜中膜厚を認めた場合は−21.16(p=0.01)となった。

 一方、2型糖尿病と臨床前心血管疾患.との間で相互作用は観察されなかった。空腹時血糖およびHbA1cは、認知機能低下の予測因子としては、重要ではなかった。

 今回の結果から演者らは、「臨床前心血管疾患.と2型糖尿病は、認識能低下の強力な予測因子であることを示唆している」と結論した。その上で、糖尿病と臨床前心血管疾患.マーカーとの間で相互作用が認められなかった点に着目し、糖尿病は独立して認知機能に悪影響を及ぼすことを示唆しているとした。また、糖尿病において血管疾患が重なることは、認知機能に対する「2番目の打撃」になるとした。

 最後に演者らは、特に高齢の2型糖尿病患者における認知機能障害を軽減させるには、現在のCVDリスク因子を軽減し、かつ糖尿病やメタボリック症候群の標的治療が役立つものと思われるとまとめた。

(日経メディカル別冊編集)