今回、米オーランドで開催された第70回米国糖尿病学会学術集会(ADA 2010)では、最終日にACCORD試験のセッションが開催され、網膜症と、腎症・神経症など糖尿病の主要な合併症の発症や増悪をみた2つのサブ解析の結果が新たに発表された。併せて、今年3月の米国心臓学会(ACC 2010)で発表された、降圧の影響をみたACCORD BP試験と、脂質降下の影響をみたACCORD lipid試験についても討論が行われた。

 心血管リスクを有する2型糖尿病患者を、血糖の厳格管理(HbA1c<6.0%)を行う群と、標準的管理(7.0<HbA1c<7.9%)を行う群に割り付けたACCORD試験では、標準治療群に対し、血糖厳格管理群で全死亡の有意な増加がみられ、厳格管理が約4年目で中断されるという予想外の結果になったことは記憶に新しい。

 今回新たに発表されたうちのACCORD Eye試験では、並行して進められたサブ解析の登録者を比較することで、血糖の厳格管理や脂質異常症の治療薬併用により、糖尿病性網膜症の進行が抑制されることが示された。米国立眼研究所のEmily Y.Chew氏らが発表した。

 演者らは、2型糖尿病患者において、血糖や血圧の厳格管理、あるいは脂質異常症治療薬の併用などが、糖尿病性網膜症の進行にどのような影響を及ぼすかを検討した。

 ACCORD試験の登録者1万251人のうち、ベースライン時点で糖尿病性網膜症による網膜光凝固治療または硝子体手術の履歴がないなど、条件を満たす2856人を登録した。主要評価項目は、あらかじめ定義した糖尿病性網膜症の増悪とした。

 血糖の厳格管理群(1429人)と標準治療群(1427人)で比較したところ、糖尿病性網膜症の増悪は、厳格管理群で7.3%、標準治療群で10.4%と、血糖の厳格管理群の方が有意に減少していた(調整済みオッズ比0.67、95%信頼区間;0.51-0.87、p=0.003)。

 次にACCORD lipid試験の登録者について、シンバスタチン単独投与群(787人)とシンバスタチンとフェノフィブラートの併用群(806人)の間で比較検討した。その結果、糖尿病性網膜症が増悪したのは、併用群が6.5%、単独群が10.2%で、併用群の方が有意に低かった(調整済みオッズ比0.60、95%信頼区間;0.42-0.87、p=0.006)。

 これに対し、ACCORD BP試験の厳格降圧群(647人)と標準治療群(616人)では、糖尿病性網膜症の増悪に有意な差はみられなかった(10.4%対8.8%、調整済みオッズ比1.23、95%信頼区間;0.84-1.79、p=0.29)。

 これらの結果から演者らは、血糖の厳格管理群あるいは脂質異常症の治療薬併用群においては、糖尿病性網膜症の発症率が減少することが分かったと結論。血糖強化治療の潜在的リスクを考慮した上で、個々の治療に生かしていくべきなどと指摘した。

血糖の厳格管理、微小血管障害の予後改善は“部分的”

 もう一方のサブ解析では、厳格な血糖管理を実施した群と標準的な血糖管理を行った群で微小血管障害リスクを比較したところ、腎不全、失明、重篤な末梢神経障害などの主要アウトカムについては、有意差は得られなかった。しかし、アルブミン尿症の発症抑制など、いくつかの微小血管障害では、血糖厳格管理群の方が有意に良好な成績を得た。米Case Western大学のFaramarz Ismail-Beigi氏らが発表した。

 主要評価項目の複合アウトカムは、(1)腎症による透析または腎移植、血清クレアチニン高値(>291.7μmol/L)、網膜症による網膜光凝固治療または硝子体手術、(2)末梢性神経障害+(1)のイベントとした。副次的評価項目としては、神経症、腎症、網膜症の個別イベント13項目が設定された。

 結果として、糖尿病性の神経症、網膜症、腎症について、あらかじめ設定された複合エンドポイントについては、有意な差を得ることはできなかった。

 血糖厳格管理を中止した時点で、(1)の複合エンドポイントが厳格管理群では5107人中443人、標準治療群では5108人中444人に発生した。ハザード比 1.00(95%信頼区間;0.88-1.14)で両者に有意差は見られなかった(p=1.00)。(2)についても厳格管理群では5107人中1591人、標準治療群で5108人中1659人にイベントが発生、両群に有意な差は認められなかった(ハザード比0.95、95%信頼区間;0.85-1.07、p=1.00)。フォローアップ終了時点までの追跡でも同じ傾向で、2つの主要評価項目について、両群に有意な差はみられなかった。

 2次アウトカムとして設定された比較項目のうち、追跡終了時点で有意(p<0.05)だったのは、微量アルブミン尿症の発症、顕性アルブミン尿症の発症、白内障手術、3段階以上の視力低下、MNSIスコア>2.0の神経障害、アキレス腱反射消失、軽度触覚の消失だった。より重篤な、末期腎不全や重篤な視力障害などでは有意差がなかった。

 Ismail-Beigi氏らは、顕性アルブミン尿症は腎不全や心血管疾患につながるもので、その抑制は望ましいとし、眼症についても厳格な血糖管理が眼に対するダメージを抑制している可能性があるとしていた。

(日経メディカル別冊編集)