Medical College of WisconsinのMarykathleen A. Henegham氏

 糖尿病性ケトアシドーシスDKA)の治療において、治療開始6時間以内にインスリングラルギン皮下投与を開始することによって、低血糖を増加させることなく、アシドーシスからの回復時間や入院期間を有意に短縮でき、入院費用の軽減にもつながることが、DKAでChildren's Hospital of Wisconsinに入院した1型小児糖尿病患者のカルテ調査によって明らかになった。Medical College of WisconsinのMarykathleen A. Henegham氏(写真)らが、6月25日から29日まで米オーランドにおいて開催された第70回米国糖尿病学会学術集会(ADA 2010)で報告した。

 DKAはインスリンの著しい欠乏によってもたらされる、生命に危険の及ぶ代謝異常で、発症者の多くは1型糖尿病患者である。高血糖(>200mg/dL)、静脈血pHが7.30未満、血清重炭酸塩(HCO3)濃度が18mEq/L超と定義され、治療としては、輸液静注、インスリン点滴を行いながら、これらの臨床検査値をモニターする。インスリングラルギン(グラルギン)は基礎インスリンとして治療レジメンに組み込まれ、皮下注にて投与される。Heneghan氏によれば、これまでの研究によって、DKA治療開始6時間以内にグラルギン投与を開始することで、代謝性アシドーシスからのより迅速な回復と、入院期間の短縮につながることが示唆されていた。

 Heneghan氏らは、2004〜2008年周辺にChildren's Hospital of WisconsinでDKA治療を受けた1型小児糖尿病患者147人(女児67人、男児80人)を、グラルギン投与開始が6時間以内のA群(年齢9.9歳、88人)と、12時間後以降のB群(年齢10.5歳、59人)に分け、カルテをレトロスペクティブに再調査した。両群の糖尿病歴(A群:2.0年 対 B群:2.2年)、BMI Zスコア(同-0.38 対 -0.32)、HbA1c値(同11.7 対 11.8%)、血糖値(同BG:567mg/dL 対 627mg/dL)、血漿ナトリウム(同134mEq/L 対 134mEq/L)、血漿カリウム(同4.9mEq/L 対 5.2mEq/L)に差はなかった。

 静脈pH(A群:7.14 対 B群:7.06、p<0.0001)、HCO3(同8.4mEq/L 対 6.0mEq/L, p<0.0001)には差が認められたが、Heneghan氏によれば、臨床上、両群は同じDKAに分類され、同じ治療レジメンを受けるような患者群である。

 カルテ再調査の結果、DKA治療開始6時間以内にグラルギンを投与することによって、低血糖の頻度(6回 対 4回)を増やすことなく、アシドーシスからの回復時間(6.9時間 対 8.8時間、p=0.04)を短縮しうることが明らかになった。またA群では、静注したインスリン総用量(0.95単位/kg 対 1.18単位/kg、p=0.001)が少なく、インスリン点滴時間(12.8時間 対 17.3時間、中央値は12.8 時間 対 17.5時間、p< 0.0001)が短く、輸液総量(3156mL 対 3840mL、p=0.007)も少なかった。加えて、入院期間(29.2時間 対 39.2時間、p<0.0001)およびDKAによる入院費用(8754米ドル 対 1万2178米ドル、p=0.001)も軽減されていた。

 Heneghan氏はこの結果について、「機序は明らかではないが、グラルギンの投与によって、循環インスリンの安定した状態がもたらされたのではないか」とした。また「DKA治療にグラルギンを組み込むことは、治療時間や入院費用を有意に減少させることができる安全で効果的な方法である。入院期間の短縮によって、起こりうる有害事象や、院内感染の危険に曝される可能性も防ぐことができる」との見解を示した。

(日経メディカル別冊編集)