糖尿病合併症の1つである下肢潰瘍の治療に、全身高気圧酸素療法(HBOT;hyperbaric oxygen therapy)の有用性が報告されているが、高コストで長時間を要する治療であるため、適用の判定が重要になる。スウェーデン・ランド大学内分泌科のMagnus Londahl氏らは、6月25日から29日まで米オーランドで開催された第70回米国糖尿病学会学術集会(ADA 2010)で、ベースラインにおける足背部(足の甲)における経皮的酸素濃度(TcPO2)測定が、治療の予後予測に有用であることを示した。

 Londahl氏らは、HBOT療法の有用性を調べたランダム化比較試験HODFU(Hyoerbaric Oxygen Treatment in Diabetic Patients with Chronic Foot Ulcers)を実施、同じ装置を用いて空気を流したプラセボ群と比較してHBOT治療群では、9カ月目の潰瘍回復率が、19%対58%と、HBOT群で有意に優れていたことを報告している。

 今回、同氏らは、TcPO2のほか、足肢上腕血圧(TBI;toe brachial index)と足関節血圧(ABP;ankle blood pressure)の各測定値と、回復率との関係を分析した。

 対象はHODFU試験登録者94人のうち、あらかじめ定めた基準(40回中36回以上の治療を受けた)で治療を完了した75人とした。

 75人のうち、38人はHBOT群、37人をプラセボ群に割り付けられていた。潰瘍の罹患期間はHBOT群が11.9カ月、プラセボ群が10.3カ月。9カ月時点の潰瘍回復率はHBOT群が58%、プラセボ群は19%だった。

 TcPO2の測定は、センサーを足背(甲部)の所定の位置に装着し、患者が通常の室内空気を呼吸している状態で6分間、次に100%酸素を呼吸している状態で6分間、1分間隔で測定し、それぞれの最高値をベースライン時、および酸素投与時のTcPO2値とした。すべての計測は21-24度の室内で、20分間の安静後、背臥位で実施した。

 結果は、ベースラインのTcPO2が25mmHg以下の群では潰瘍治癒率は0%、26-50mmHgでは約50%、51-75mmHgでは約70%、76mmHg以上ではほぼ100%と、TcPO2値が高いほど回復率が高い傾向がみられた(25mmHg以下群と51-75mmHg群、76mmHg以上群の間で有意)。酸素付与時も同じ傾向を示し、50mmHg以下では回復者はいなかったのに対し、51-100mmHgでは約30%、101-200mmHgでは約65%、201mmHg以上では約75%だった(201mmHg以上群と50mmHg以下群で有意差あり)。TBPとABIは回復率との間に、こうした関連はみられなかった。

 これらの結果からLondahl氏らは、「HBOT治療の予後予測因子として、TcPO2は、ABIやTBPよりも有用」とし、HBOT治療の適応は、ベースラインにおけるTcPO2値が25mmHg以上とするのが適切ではないか」とした。

(日経メディカル別冊編集)