共同演者である米ジョン・H・ストロンガーJr記念クック郡病院のBettina Tahsin氏

 重度な糖尿病性腎症ADN)患者の半数以上が、ケースマネジメントによる段階的な増量アルゴリズムを用いたBasal-Bolus療法によって、HbA1c目標値を達成できることが示された。HbA1c目標値を達成できる可能性が高いのは、体重当たりのインスリン必要量が少ない患者だという。慢性腎疾患(CKD)から末期の腎不全(ESRD)への進行抑制を目的とする現在進行中の無作為化介入試験MFI-AND(Multi-Factorial Intervention in Advanced Diabetic Nephropathy)の、血糖値に関する初期解析によって明らかになったもので、米ジョン・H・ストロンガーJr記念クック郡病院のLeon Fogelfeld氏らが、6月25日から29日まで米オーランドにおいて開催された第70回米国糖尿病学会学術集会(ADA 2010)において報告した。

 日本でも、透析導入患者の原疾患としてもっとも多くを占めるのが糖尿病性腎症であり、ADN (CKDステージ3‐4)患者のESRDへの進行を遅らせる、あるいは予防するための効果的な治療法の確立がのぞまれている。MFI-AND試験は、ADN患者120人を対象に、チーム医療(内分泌専門医、腎臓専門医、看護師、栄養士)によるケースマネジメントを含む多因子介入群(介入群)と通常治療群(通常群)の、血糖値、血圧(BP)、アルブミン尿症、ESRDへの進行に対する影響を明らかにするために行われている無作為化臨床試験である。今回、血糖値に関する初期解析の結果が報告された。

 治療目標はHbA1c値<7%、BP<130/80mmHgで、通常群では糖尿病と高血圧に対する通常治療を行い、介入群では最初の6カ月は月1回、その後18カ月まで2カ月に1回受診し、受診時に医療チームによる治療評価、患者への教育と治療方針の検討を行ったほか、血糖値、血圧、アルブミン尿などを厳格にモニターし、それに対応して食事・運動および薬物療法を、頻繁に調節した。最終的な患者の登録目標は各群60人で、今回の初期解析の対象は、現時点で観察期間が最低12カ月(中央値55週)の介入群39人、通常群27人。試験登録時における両群の年齢、体重、糸球体濾過率(GFR)、CKDステージ3‐4の患者割合、HbA1c値に差は認められなかった。

 Basal-Bolus療法に関しては、HbA1c値>7%の場合、インスリングラルギン(グラルギン)10単位で投与を開始し、試験前に投与していたSU薬は継続したが、チアゾリジン系薬剤(TZD)、メトホルミンは中止した。試験前にグラルギンを投与していた場合は、他のインスリンを中止しグラルギンのみに、他のインスリン製剤を投与していた場合は、基礎インスリンの80%をグラルギンに、超速効型インスリンの80%をインスリングルリジン(グルリジン)の1日3回または食事時に1、2回または他の組み合わせに変更した。グラルギン+グルリジンの用量は、週に1回のケースマネジメントで、BG、空腹時血糖(FPG)、食後血糖(PPG)にもとづいて調整、指示された。

 最終観察時におけるHbA1c中央値は、介入群で6.8%、通常群で7.8%。HbA1c値が7%未満を達成した患者割合は、通常群で25.6%から37%へと増加し、介入群では25.6%から56.4%へと有意に増加していた(p=0.008)。インスリン1日量の中央値は、通常群では90単位から82単位へと減少し、一方の介入群では60単位から70単位へと増加していた。HbA1c目標値達成と関連していた因子は、体重当たりのインスリン用量が低い(オッズ比0.16、95%信頼区間;0.04-0.67、p=0.012)、GFR低値(オッズ比0.94、95%信頼区間;0.89-0.99、p=0.026)だったという。

 Fogelfeld氏らは、「ケースマネジメントによる段階的な増量アルゴリズムで用いたグラルギンとグルリジンによるBasal-Bolus療法を行うことによって、ADN患者の半数以上でHbA1c目標値を達成することができた。HbA1c目標値達成の可能性は、インスリン必要量が少ない患者で高かった」と結論した。なお今回の解析では、糖尿病性腎症の重症度はさまざまだが、インスリン療法を行った患者の約90%が低血糖を経験したことも明らかになっており、安全性の観点からもチーム医療によるきめ細かなケースマネジメントの意義は大きい。

(日経メディカル別冊編集)