フランス・Dijon大学のBruno Vergres氏

 2型糖尿病患者で高頻度に認められる高トリグリセライド(TG)血症と低HDLコレステロール(HDL-C)血症に対して、アディポネクチン値と肝脂肪量がどのような影響を及ぼすのかを検討した研究で、高TG血症には肝脂肪量が、低HDL-C血症はアディポネクチン低値が独立して影響を及ぼしており、2つの疾患の発症機序が異なる可能性が示された。フランス・Dijon大学のBruno Vergres氏(写真)らが、6月25日から29日に米オーランドで開催された第70回米国糖尿病学会(ADA 2010)学術集会で報告した。

 2型糖尿病患者では脂質異常症として、高トリグリセライド(TG)血症と低HDLコレステロール(HDL-C)血症を伴うことが多い。その原因として、脂肪細胞が産生するアディポネクチン値の低下、肝臓に蓄積する脂肪量の増加が考えられるが、肝脂肪量とアディポネクチン値には強い負の相関が認められるため、アディポネクチン低値と肝脂肪量の増大が、2型糖尿病患者における高TG血症と低HDL-C血症の発症に及ぼす独立した影響については十分に検討されていなかった。

 研究グループは、2型糖尿病患者195例を対象とした観察研究を実施した。グリタゾン系薬の投与例、重度の腎不全合併例は除外した。患者の背景は、男性94例、女性101例、平均年齢61.6歳。糖尿病の罹病期間は13.1年、HbA1c値8.5%だった。また、血清脂質値はTG値179mg/dL、HDL-C値43mg/dL、LDL-コレステロール値109mg/dLで、肝脂肪量は10.1%、内臓脂肪面積は277cm2、皮下脂肪面積は387cm2、アディポネクチン値は61ng/mLであった。

 まず、単変量解析を行ってTG値、HDL-C値に影響を及ぼす因子を同定したところ、TG値は肝脂肪量、内臓脂肪面積、BMI、HbA1c値と正の相関を、HDL-C値、アディポネクチン値と負の相関を示し、HDL-C値はアディポネクチン値、レプチン値と正の相関を、TG値、内臓脂肪面積、HbA1c値、体重と負の相関を示すことが明らかとなった。さらに、肝脂肪量はTG値、内臓脂肪量、体重と正の相関を、アディポネクチン値、年齢と負の相関を示すことも確認された。

 多変量解析では、HDL-C値を規定する有意な因子としてアディポネクチン値、TG値、性別が同定されたが、肝脂肪量は有意な因子ではなかった。また、TG値を規定する有意な因子として肝脂肪量とHDL-C値が同定されたが、アディポネクチン値は有意な因子ではなかった。さらに、肝脂肪量は内臓脂肪面積、TG値、年齢とは有意に関連したが、HDL-C値やアディポネクチン値との有意な関連性は認められなかった。

 こうした知見に基づきVergres氏は、2型糖尿病患者における脂質異常症の発症機序として、高TG血症には肝脂肪量が、低HDL-C血症にはアディポネクチン低値が、それぞれ独立して影響を及ぼすというスキームを提示。「2つの独立した発症メカニズムが存在している可能性が示された」と述べた。

(日経メディカル別冊編集)