オランダ・OLV病院のSarah E. Siegelaar氏

 ICU入院中にしばしばみられる一過性の血糖上昇は、患者の予後を悪化させることが報告されている。しかし、これに対して積極的な血糖コントロールを行うべきか、それとも通常のコントロールにとどめるべきかについては、相反する研究結果が報告されている。オランダ・OLV病院(Onze Lieve Vrouwe Gasthuis)のSarah E. Siegelaar氏(写真)らは、ICU患者の血糖値と死亡率の関係をレトロスペクティブに解析した結果、両者には“Uカーブ”の関係が存在することを見出し、積極的すぎる血糖コントロールはかえって有害になる可能性を、6月25日から29日に米オーランドで開催された第70回米国糖尿病学会(ADA 2010)学術集会において指摘した。

 本検討の対象は、2004〜2007年の4年間にOLV病院ICUに入院した5983例の患者のうち、外科ICUから45%、内科ICUから55%の割合で無作為に抽出した2435例である。平均年齢は63.9歳、ICU患者の重症度の指標であるAPACHE IIスコアは20.3、血糖値は144mg/dLであった。

 Siegelaar氏らは、これらの患者を平均血糖値に応じて十分位し、各分位層のICU死亡率を比較した。その結果、ICU死亡率は平均血糖値の低い分位層と高い分位層で高く、中間の分位層で低くなる“Uカーブ”を描いた。この傾向は、外科患者、内科患者とも同様だった。

 年齢、性、APACHE IIスコア、ICU入院期間(24時間超または未満)、重症低血糖発現の有無について補正後に、最も死亡率の低い第6十分位層(平均血糖値135.0〜138.6mg/dL)に対する各分位層のオッズ比(OR)を求めると、血糖値の高い上位2つの分位層(>163.7mg/dL)と血糖値の低い下位3つの分位層(<124.2mg/dL)で、ORの有意な上昇が認められた。すなわち、死亡率を上昇させない安全な血糖コントロール範囲は、126〜162mg/dLと考えられた。

 2001年のLeuven試験では、積極的な血糖管理群の方が、通常の血糖管理群より死亡率が低かったとされたが、昨年発表のNICE-SUGAR試験では、逆に通常の血糖管理群の方が、積極的な血糖管理群より死亡率が有意に低かった。今回のSiegelaar氏らの解析結果は、後者の結果と一致し、「アグレッシブすぎる血糖コントロール」はかえって害になる可能性を示唆する知見といえよう。

 「積極的すぎる血糖コントロール」が死亡率の上昇をきたす理由として、最も考えられるのは低血糖頻度の上昇だろう。事実、今回の対象コホートでも、平均血糖値の低い層ほど低血糖の発現率が高率だった。しかし、低血糖の発現について補正した後も“Uカーブ”は消失せず、低血糖だけが死亡率上昇の原因ではないことが示唆された。その理由の解明を含め、「さらなる検討が必要」とSiegelaar氏は述べた。

(日経メディカル別冊編集)