米国人が50歳で2型糖尿病を発症した場合、生涯の直接的医療コストと、労働生産性の低下や介護費用などの間接コストの合計は17万2000ドル――およそ1550万円になる。こんな推計結果を米疾病対策センター(CDC)が発表した。医療コストのうち、実に7割は合併症の治療に要するという。研究結果は、6月25日から29日に米オーランドで開催された第70回米国糖尿病学会(ADA 2010)学術集会で、CDC糖尿病部門のXiaohui Zhuo氏らが報告した。

 Zhuo氏らは、CDCと調査企業の米RTIインターナショナル社が共同開発した糖尿病モデルを用いてコスト算定を行った。このモデルを用いると、2型糖尿病の新規発症以降の“経済的自然史”のシミュレーションを実施できる。本研究では、直接的医療費として、糖尿病自体の治療と合併症の治療のコスト、間接的コストとして、欠勤、疾病出勤(具合が悪い状態で就労すること)による損失、介護費用、早期死亡などを算入した。

 結果として、2009年時点で、米国における2型糖尿病の生涯コストは、女性で平均18万ドル(1ドル90円として1620万円)、男性では平均25万1000ドル(同2259万円)と推定された。年齢別のコストは当然若年ほど高く、30歳の発症では305万ドルを要する計算になった。以降、40歳では23万7000ドル、50歳では17万2000ドル、60歳では10万5000ドル、70歳では5万7000ドルとなった。

 女性全体の推定値で内訳をみると、直接的医療費は総コストの37%に相当する6万7000ドル。このうち糖尿病そのものの治療費は1万9000ドルで直接的医療費の28%に過ぎず、ほかは合併症治療に要していた。最も高コストの合併症は脳卒中で2万6000ドルを要し、直接的医療費の39%を占めていた。間接的コストは11万3000ドルで、欠勤が3000ドル、疾病出勤が2万1000ドル、介護費用が1万4000ドル、早期死亡が7万6000ドルとされた。

 一方、男性では直接的医療費が6万1000ドルと女性よりもやや低かったが、間接的コストは19万1000ドルと女性の約1.7倍で、男性の生涯コストの76%を占めた。その内訳は欠勤が6000ドル、疾病出勤が4万5000ドル、介護費用が1万3000ドル、早期死亡は12万6000ドルだった。

 本研究では、発生するコスト経年的な変化も示している。それによると、発症後、最初の15年で、生涯の直接的医療費の6割を要するという。その理由としては、極めて高額の医療費を要する合併症である脳卒中や冠動脈疾患が、糖尿病発症から15年の間に起こることなどを挙げている。直接的医療費の総額の内訳をみても、約7割を合併症治療コストが占める。合併症治療コストのほぼ7割、直接的医療費全体の5割は大血管疾患である冠動脈疾患と脳卒中が占める推定になった。

 これらの結果についてZhuo氏らは、2型糖尿病が個人、保健医療システムから社会全体にまで大きな経済的負担になっていることが示唆されたとした。同氏は、「米国では有症者を基にしたコスト試算はあるが、発症から追跡する形での糖尿病コスト分析はこれまでなかった」と指摘、本研究による推定は、2型糖尿病予防プログラムの構築に有用ではないか、と期待を示した。


(日経メディカル別冊編集)