インスリン治療を受けている糖尿病患者では、自己血糖管理SMBG:self-monitoring of blood glucose)の有効性が確認されているが、体系的な管理手法の導入により、インスリンを使っていない2型糖尿病患者でも、ストレスを感じることなく効果的な血糖管理が可能という研究結果が示された。6月25日から29日まで、米オーランドで開催された第70回米国糖尿病学会学術集会(ADA 2010)で、米カリフォルニア大学サンディエゴ校(UCSD)のWilliam Polonsky氏らが報告した。

 研究グループは、血糖値自己測定器と、紙製の管理シートを用いた体系的SMBG管理システムの有用性を確かめる1年間の前向き多施設ランダム化臨床試験「Step」を実施した。対象は、インスリン未治療で、コントロール不良(HbA1c≧7.5%)の2型糖尿病患者483人(平均年齢55.8歳、平均罹患機関7.6年、平均HbA1c 8.9%)。医療機関単位で、治療方針を無作為に割り当てるクラスターランダム化という手法を用い、無作為に、21施設(n=256)を体系的SMBG治療に、13施設(n=257)を対照群に割り付けた。アウトカムはHbA1c値と、うつ症状(精神的Qストレス)の変化とした。

 対照群施設では通常治療を実施した。3カ月に1回の通院で、HbA1c測定を行い、SMBGの情報も提供した。体系的SMBG群施設では、対照群と同等の治療に加え、体系的SMBG管理を実施した。両群の全患者には、血糖自己測定器と毎回の測定に用いるストリップが無料で提供され、使い方の講習が行われた。

 体系的SMBG群の患者はあらかじめ標準的なトレーニングを受けたうえで、血糖測定から食事、運動量の記録まで7ステップで所定の用紙に記録する専用ツール(Accu-Chek 360 View)への記録を行った。1、3、6、9、12カ月目の通院時に用紙を持参して医師に見せ、結果についてディスカッションを行った。担当医は、患者のSMBG記録のパターンに対応した推奨治療アルゴリズムの提供を受けた。通院時には、HbA1cの測定と、うつ状態スコアを計測するPHQ-8試験も行った。

 ITT(intention to treat)解析による結果は、12カ月目の時点で、体系的SMBG群は対照群に対し、HbA1cが0.3%(95%信頼区間;−0.54-−0.01)有意に低下していた(p=0.04)。

 PP(per protocol)解析により、体系的SMBG群のうち、コンプライアンス不良者を分けた分析を行ったところ、12カ月後の体系的SMBGコンプライアンス良好群と対照群のHbA1c値の差は0.5%(p=0.0025)となった。体系的SMBGコンプライアンス不良群と対照群には有意な差は認められなかった。

 どちらの群でも血糖値の測定回数が多いほどHbA1cの低下が大きい相関関係がみられたが、1日の測定回数は1-3カ月目、3-6カ月目、6-9カ月目、9-12カ月目において、いずれも対照群の方が多く、1-3カ月目を除き、有意な差があった。

 うつ症状の程度を示すPHQ-8試験の結果は、両群とも試験期間を通じて減少(良好になる)傾向にあったが、群間に有意な差はみられず、体系的SMBG群の患者が余分なストレスを感じている傾向は認められなかった。

 Polonsky氏らはこれらの結果から、SMBGは、本研究で示した体系的な実施手法を採用することで、インスリン治療を行っていない患者の血糖管理についても有意に改善することが示された。体系的手法の採用で患者のストレスが増すことはなかったとしたうえで、「SMBGの有効性は、測定に基づく血糖管理を高度に体系化し、医師と患者が情報を共有・評価することで、より有効性が増すことが確かめられた」と結論づけていた。

(日経メディカル別冊編集)