米コロラド大学のBoris Draznin氏

 ブタ新生児膵島細胞を、新たに開発されたマイクロカプセルに封入して移植することで、免疫抑制を不要にした新たな研究成果が報告された。少数の1型糖尿病患者を対象とした臨床試験の結果は良好で、深刻な副作用や感染はみられず、最長8カ月間、インスリン投与が不要になった例もあるという。米コロラド大学のBoris Draznin氏(写真)らが、6月25日から29日まで、米オーランドで開催された第70回米国糖尿病学会学術集会(ADA 2010)で報告した。

 膵島細胞移植は糖尿病の根治的な治療法だが、同種(ヒト‐ヒト)間移植ではドナー確保が極めて困難で、米国ですら、1型糖尿病患者200万人超、2型糖尿病患者2000万人超に対して、移植実績は1000例程度でしかない。このため、そのため、1980年代からブタ膵島細胞の異種間移植が試みられてきた。ブタからの異種間移植における最大の課題は、拒絶反応と動物由来感染症の排除の2点。Draznin氏らは、無菌動物の作製とマイクロカプセル化技術によって、これらの懸案の解決を目指した。

 マイクロカプセル化は、ニュージーランドのバイオテクノロジー企業であるLiving Cell Technologies社が開発した技術を用いた。これはアルギネートと呼ばれるバイオポリマーで膵島細胞を包む方式で、インスリン、糖、酸素、その他の栄養物質は自由に透過するが、抗体やT細胞は通過しないため、免疫抑制が不要で、ブタ由来膵島細胞は長期にわたって生着し、インスリンを分泌するという。

 ブタは、E型肝炎やブタレトロウイルスの感染を避けるため、注意深く飼育され、頻繁に感染症を確認した。

 臨床試験は、2007年から2010年にかけて行われた。対象は発症後5〜15年で、5年超にわたってインスリン投与を受けている1型糖尿病のボランティア成人患者8人(23‐63歳)。モスクワのSklifasovsky研究所で移植を実施した。移植は腹腔鏡的に体重1kg当たり5000〜1万等量を注入する形で行われた。

 移植の結果、HbA1c値の平均は8.86%から6.91%に2ポイント近く低下、投与インスリン量は34%減少した。患者からはブタ由来インスリンが検出され、8人中5人からは生着した膵島細胞を採取できた。

 報告時点のフォローアップ期間は18週から最大96週で、患者のうち2人は最長8カ月間、インスリン投与を中止できた。深刻な副作用は認められておらず、移植直後に腹部不快感や微熱の訴えがあったが、いずれも数日以内に消失した。動物由来感染症の発生もみられなかった。

 Draznin氏はこれらの結果から、本研究で用いたマイクロカプセル化や無菌化により、1型糖尿病の有望な治療法が実現できたとして、臨床応用に期待と自信をみせた。

(日経メディカル別冊編集)