糖尿病発症早期の厳格な血糖コントロールは、糖尿病性の細小血管障害を減少させるだけでなく、大血管障害の抑制にもつながる。しかし、臨床の現場ではHbA1c目標値を達成できず、長期にわたって血糖コントロールが不良の2型糖尿病患者も少なくない。多国籍無作為化オープンラベル比較試験の二次解析によって、基礎インスリン導入時にHbA1c値が高く、数多くの経口血糖降下薬(以下OAD)を投与している患者ほど、その後の血糖コントロール改善が困難であることを裏付ける結果が示された。6月25日から29日まで米オーランドにおいて開催された第70回米国糖尿病学会学術集会(ADA 2010)において、オランダAcademic Medical CenterのSanne G. Swinenn氏が報告した。

 対象は、40〜75歳で糖尿病歴が1年以上、一定量のOAD(メトホルミン≧1g/日を含む)による3か月以上の治療にもかかわらず、HbA1cが7.0〜10.5%のインスリン未治療2型糖尿病患者964例。持効型インスリンであるインスリングラルギン(以下グラルギン)1日1回の夜間投与、または同じく持効型のインスリンデテミル(以下デテミル)1日2回投与に無作為に割り付けた。

 グラルギンは、空腹時血糖値(FPG)が100mg/dL未満に達するまで2日ごとに2単位ずつ増量した。デテミルは、夕食前の血糖値が125mg/dL以下に達するまで、2日ごとに朝夕とも1単位ずつ増量し、FPGが100mg/dL未満に達するまで2日ごとに夕食時前投与を2単位ずつ増量。さらには夕食前の血糖値が100mg/dL未満に達するまで2日ごとに朝食時投与を2単位ずつ増量するものとした。

 チアゾリジン系薬剤は無作為化の時点で中止し、インスリン分泌促進薬は中止または試験期間中一定量を投与した。メトホルミンはすべての患者で継続した。

 今回、解析対象とした因子は、年齢、性別、人種、罹病期間、糖尿病合併症の有無、HbA1c値、FPG、体重、BMI、胴囲、試験中に投与したOADの数、登録前におけるインスリン分泌促進薬投与の有無、血圧、脂質、尿中微量アルブミン/クレアチニン比、ALTおよびAST、割り付けられた治療(グラルギン/デテミル)である。ANOVA、カイ二乗あるいはKruskal-Walls検定によって単変量解析を行い、p<0.20であった因子について、多変量ロジスティック回帰モデルで解析した。その因子をモデルに残すかどうかの決定には、p<0.05を基準とするbackward selection procedureを用い、最終モデルについては受診者動作特性(ROC)曲線の曲線下面積(AUC)を計算した。

 単変量解析において、アジア系人種、HbA1c高値、OAD数が多い、試験登録前のインスリン分泌促進薬の使用(いずれもp<0.001)、罹病期間(p=0.022)、若年者(p=0.072)、収縮期血圧低値(p=0.083)、TG高値(p=0.194)の8つの因子が、HbA1c値7%未満を達成できないことと相関していた(p<0.20)。このうち、最終モデルで、HbA1c目標値を達成できないことと有意に相関していたのは、試験開始時のHbA1c値レベルと、試験期間中に投与したOAD数のみであった(p<0.05)。また最終モデルのROC曲線のAUCは0.663であった。

 今回の結果は、数多くのOADを投与しているにもかかわらずHbA1c高値の患者では、その後の治療に難渋することを示すものだ。Swinnenn氏は「インスリン開始時のHbA1c値が低いほど、そして試験期間中に投与したOAD数が少ないほど、基礎インスリン導入によって良好な血糖コントロールを得られる」と結んでいるが、裏返して考えれば、早期診断、早期インスリン導入の重要性を示唆する結果だった。

(日経メディカル別冊編集)