米ジョンズ・ホプキンス大学のRanee Chatterjee氏

 糖代謝異常のスクリーニング検査を行い、糖尿病/境界型患者を同定することで早期からの治療介入が可能となり、糖尿病の発症や進行、合併症の発症リスクを低下させ、医療コストを抑制できると考えられる。しかし、スクリーング検査の対象となる適切な集団や検査法については十分に検討されていない。そこで米ジョンズ・ホプキンス大学Ranee Chatterjee氏(写真)らは、糖代謝異常のスクリーニング検査の費用対効果を検討し、その結果を6月25日から29日まで米オーランドで開催された第75回米国糖尿病学会学術集会(ADA 2010)で報告した。

 本研究の対象はボランティア1573人である。血糖値のスクリーニング検査として、随時血糖値(血漿および毛細血管中)、絶食せずに行う50g経口グルコース負荷試験(GCT)1時間値(血漿中;GCTpl、毛細血管中;GCTcap)を、2回目の受診時にHbA1c値、75g経口グルコース負荷試験(OGTT)2時間値を測定して、糖尿病および境界型患者を同定した。

 コスト分析では、スクリーニングからの3年間に行う検査および治療に要する費用を積算した。医療コストとしてスクリーニング検査費用に加え、スクリーニング検査の特異度を70%として偽陽性例ではOGTT実施費用を、真陽性例では診療およびメトホルミン(ジェネリック製品)の薬剤費を、偽陰性例では糖尿病/境界型と診断できなかったことで発生する医療費を見積もった。

 また社会的コストとして、上記の医療コストに加えて、患者が検査に要する時間、真陽性例では直接的非医療コストおよび間接的治療関連コストを、偽陰性例では糖尿病による生産性低下に起因する間接コストを見積もった。

 対象の平均年齢は48歳、アフリカ系アメリカ人が58%を占め、女性が58%を占めた。スクリーニング検査では4.6%が糖尿病、23.3%が糖尿病あるいは境界型と判定された。対象を年齢から45歳未満、45〜55歳、55歳超、BMIから25kg/m2未満、25〜35kg/m2、35kg/m2超の3群に分けて、医療コストおよび社会的コストを比較検討した。

 まず、GCTplを用いたスクリーニング検査を行うことで、検査を行わなかった場合に比べて、境界型では医療コストが、糖尿病では医療コストと社会的コストが節約できることが示された。また、糖代謝異常例の割合は加齢およびBMIの上昇とともに高まり、その結果としてGCTpl/75gOGTTを行って糖尿病/境界型患者1例を同定するのに要する費用は低下した。

 さらに、スクリーニングを行うことで節約できる医療コストの割合は、加齢およびBMIの上昇とともに高まり、BMIが25〜35kg/m2の群では7.3%%、35kg/m2超の群では21.5%、年齢が40〜55歳の群では8.1%、55歳超の群では17.1%となった。しかし、BMIが25kg/m2未満の群、年齢が40歳未満の群では、検査法によっては医療コストがかえって増加した。また、最も費用対効果の高い検査法はGCTplであった。

 以上の結果を総括してChatterjee氏は、糖代謝異常のスクリーニング検査としてGCTplを定期的に実施すべきであると結論し、講演を終えた。

(日経メディカル別冊編集)