米・オレゴン健康科学大学のMathew Riddle氏

 Monnierらは、インスリン未治療の2型糖尿病患者を対象とした研究からHbA1c値が低い場合には高い場合に比べて食後高血糖の影響が大きくなり、空腹時高血糖の影響は限定的であることを指摘した。この結果は、HbA1c値が高い患者でなければ、食後高血糖の管理を重要視する根拠となっている。米・オレゴン健康科学大学のMathew Riddle氏(写真)らは、基礎インスリン補充療法の効果を検討した6件の臨床試験のメタ解析によってこの説について検証し、その結果を6月25日から29日まで米オーランドにおいて開催された第70回米国糖尿病学会学術集会(ADA 2010)で報告した。

 本研究の対象は、食事運動療法あるいは経口血糖降下薬で血糖コントロール不十分の2型糖尿病患者で、24週間の基礎インスリン療法を完了した1699人。登録時と24週間後の、毎食前および2時間後、就寝時の7ポイントで測定された血糖値を検討した。対象の平均年齢は59.4歳、男性が57.7%を占め、平均罹病期間は9.0年であった。約60%に持効型溶解インスリンアナログであるインスリングラルギン(以下、グラルギン)が、残りの40%には中間型インスリン製剤が投与されていた。

 24週間の基礎インスリン療法により、空腹時血糖値は194mg/dLから125mg/dLに、HbA1c値は8.69%から7.04%に低下した。ベースラインのHbA1c値で患者を5グループに層別化して1日7回の測定ポイントにおける血糖AUCを求め、両者の関連性を比較検討したところ、ベースラインではr2=0.545(p<0.0001)、24週後にはr2=0.471(p<0.0001)と強い相関が認められた。

 ベースラインでは高血糖状態(>100mg/dL)に占める空腹時高血糖の割合とHbA1c値との関連性は弱かったが(p=0.074)、24週間のインスリン治療によってその関連性は強まり、有意となった(p=0.0155)。また、高血糖状態に占める空腹時高血糖の割合はベースラインでは76〜80%と高かったが、24週後には41〜48%に低下した。

 グラルギンと中間型インスリンの血糖改善効果を直接比較したサブ解析では、24週後のHbA1c値の低下率はグラルギン群 -1.67%、中間型インスリン群 -1.59%と同様であった。しかし、高血糖状態に占める空腹時高血糖の割合は、グラルギン群では79.9%から37.5%に、中間型インスリン群では77.7%から41.9%に低下し、その変化量はグラルギン群で有意に良好であった(p=0.0399)。

 血糖値<50mg/mLを伴う症候性低血糖は全体では559人(34.4%)で発現したが、重篤な低血糖を発現したのは25人(1.54%)に留まった。また、症候性低血糖の発現率はグラルギン群40.8%、中間型インスリン群49.1%と、前者で有意に低かった(p<0.05)。

 以上の検討から、食事運動療法あるいは経口血糖降下薬でコントロール不良の2型糖尿病患者では、高血糖状態に占める空腹時高血糖の割合が高いがHbA1c値との関連性は低いこと、インスリン治療後には高血糖状態に占める空腹時高血糖の割合は低下したものの依然として無視できないほど大きく、HbA1c値との関連性は強まることが示された。

 インスリン治療の前後で高血糖状態に占める空腹時高血糖の割合はHbA1c値にかかわらず高かったことからRiddle氏は、HbA1c値が7.0%未満の患者でも基礎インスリン補充療法を行って、空腹時高血糖を是正することが重要だと述べて、講演を終えた。

(日経メディカル別冊編集)

■7月2日に以下の訂正を行いました。
第1パラグラフで、「HbA1c値が高い患者においても食後高血糖の管理を重要視する根拠となっている。」とありましたが、正しくは「HbA1c値が高い患者でなければ、食後高血糖の管理を重要視する根拠となっている。」でした。