糖尿病患者の低血糖障害では、目がかすむ、視界が暗くなるなどの症状が起きることはよく知られている。米ニューヨーク州立大学Syracuse校のMukhtar I. Kahn氏らは、6月25日から25日にかけて米オーランドで開催された米国糖尿病学会学術集会(ADA 2010)で、1型、2型糖尿病患者への聞き取り調査をもとに、低血糖障害時における視覚障害の実態を報告した。

 対象は、予備的な聞き取りで、低血糖を呈した際に視覚異常を経験した糖尿病患者85人。同意を得た上で症状や回数、発作時の状況などを調べ、医療記録と対照した。

 対象85人(男性29人、女性56人)の平均年齢は50.6(16‐83)歳。43人が2型糖尿病、42人が1型糖尿病だった。平均罹患期間は19.9(1‐54)年、平均HbA1cは8.1%(6.4‐9.8%)だった。すべての患者は参加時にはインスリン治療を受けており、経口糖尿病薬を用いている人はいなかった。26人がインスリンポンプを使用、59人は他のレジメンを用いていた。

 低血糖障害時における視覚異常としては、75%が目のかすみを経験していたほか、視野が暗くなる(46%)、浮遊物が見える(35%)、ものが二重に見える(18%)、視野の中心が見えなくなる(37%)などといった多彩な症状を訴えていた。2%は一過性の失明を経験していた。対象者のうち、糖尿病性網膜症の診断を受けていたのは45人(53%)だった。

 視覚障害が起きた時の自己申告による血糖値は、20‐60mg/dLが68%と60mg/dL以下が7割を占めていたが、27%は61‐90mg/dLで経験していた(5%は不明)。

 視覚障害の発症から回復までの時間は、15分以内が45%、30分以内が31%、60分以内が12%で、ほとんどが短時間で回復していた(60分超は2%)。低血糖発作の回復と視覚障害の回復は関連性があるようだった。

 これらの結果についてKahn氏らは、「特に無自覚性の低血糖を呈する患者では、低血糖による視覚障害が重大な事故につながりかねない。こうした患者では、血糖値の注意深いモニターが不可欠」とした。

(日経メディカル別冊編集)