米・Kosow Diabetes Treatment CenterのRonald B.Goldberg氏

 可溶性細胞間接着分子の1つであるsE-Selectinの血中濃度が、2型糖尿病の予測因子であることが示された。糖尿病予防プログラムの10年にわたる追跡研究により明らかになった。成果は、The Diabetes Prevention Program Research Groupを代表して米・Kosow Diabetes Treatment CenterRonald B.Goldberg氏(写真)らが、6月25日から29日まで米オーランドで開催された第70回米国糖尿病学会学術集会(ADA 2010)で発表した。

 炎症、内皮機能障害、凝血に関するバイオマーカーは、2型糖尿病の予測因子である。しかし、糖尿病の発症リスクの高い人でも予測できるのか、あるいはどのバイオマーカーが最適であるかなどについてはほとんど研究されていないという。演者らは、糖尿病のハイリスク群での予測因子を探索するとともに、最適なバイオマーカーについて検討を重ねた。

 対象は、糖尿病予防プログラムであるDPP/DPPOS(the Diabetes Prevention Program Research)の中でプラセボ群に割り当てられた参加者のうち、耐糖能異常(IGT)か、空腹時血糖が高いか、あるいは体格指数24kg/m2以上の条件にあった1068人。

 ベースラインでの検体を用いて、炎症(C反応性タンパク質、IL-6、MCP-1、アディポネクチン、レプチン)、内皮機能障害(可溶性細胞間接着分子であるsE-Selectin、sICAM-1)、凝血促進(tPA、フィブリノーゲン)について、それぞれのマーカーをELISA、ヨウ素125放射免疫測定(RIA)または免疫比濁法により測定した。

 平均10年の追跡期間中、1068人のうち509人が糖尿病を発症した。人口統計学的因子で補正したCox回帰モデルを用い、糖尿病発症に及ぼすバイオマーカーの影響を評価した。糖尿病発症は、半年ごとに行われる空腹時血糖(FPG)検査か、1年ごとの糖負荷試験(OGTT)で診断され、2回目の試験で確認されたものとした。

 ハザード比は、各マーカーのSD当たりで表した。SDは、sE-Selectinが19ng/mL、sICAM-1が74ng/mL、アディポネクチンが3.3ng/mLなどだった。

 その結果、sE-Selectin(ハザード比1.23、95%信頼区間;1.14-1.33、p<0.001)、sICAM-1(ハザード比1.17、同;1.07-1.28、p<0.001)、logCRP(ハザード比1.13、同;1.02-1.24、p=0.014)、IL-6(ハザード比1.13、同;1.03-1.23、p<0.001)、tPA(ハザード比1.14、同;1.05-1.23、p=0.002)、およびアディポネクチン(ハザード比0.80、同;0.72-0.90、p<0.001) が、それぞれ糖尿病発症と関係があった。

 複合モデルによる解析では、内皮機能障害のマーカーであるsE-SelectinとsICAM-1および脂肪組織増加の逆マーカーであるアディポネクチンが耐糖能異常の民族多様な集団において糖尿病発症と関係があった。一方で、炎症や凝血マーカーは関係がなかった。

 sE-Selectinのハザード比は1.15(同;1.05-126、p=0.004)、sICAM-1のハザード比は1.10(同;1.00-1.21、p=0.049) およびアディポネクチンのハザード比は0.85(同;0.75-0.95、p=0.005)で、これら3つのマーカーが有意のままだった。さらに体格指数、FPG、および30分インスリン/30分グルコース比で調整後は、sE-Selectin (ハザード比1.17、同;1.07-1.28、p<0.001)のみが糖尿病を予測因子として残った。

 これらの成績から演者らは、「選択的内皮機能障害のマーカーであるsE-Selectinと糖尿病発症との強い関係が明らかになった」と結論、「耐糖能異常がある被験者においては、内皮機能障害が、肥満やインスリン抵抗性およびβ細胞機能障害とは別に、独立して糖尿病発症に影響を及ぼすことを示唆している」と考察した。

(日経メディカル別冊編集)