米ウイスコンシン大学のOrly Vardeny氏

 β遮断薬利尿薬の投与は糖尿病の新規発症リスクを高めることが知られているが、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬の併用で、このリスク上昇を抑制できることが示された。米ウイスコンシン大学のOrly Vardeny氏(写真)らが、6月25日から29日に米オーランドで開催された第70回米国糖尿病学会(ADA 2010)学術集会で発表した。

 演者らは、安定期の冠動脈疾患(CAD)を有する患者8290人を、ACE阻害薬のトランドラプリルとプラセボに割り付け、ACE阻害薬のイベント抑制効果をみたPEACE試験(The Prevention of Events with ACE inhibition)の登録者を対象として、β遮断薬と利尿薬が糖尿病の新規発症リスクに及ぼす影響と、ACE阻害薬を併用した場合、そのリスクがどのような影響を受けるかを調べることとした。追跡期間の中央値は4.8年である。

 PEACE試験登録者のうち、ベースラインで糖尿病を発症していなかったのは6910人(女性1179人、男性5731人、平均64歳)。そのうち、4147人(60%)がβ遮断薬を、829人(12.0%)は利尿薬を服用していた。フォローアップ期間中に733人(8.8%)が新規に糖尿病を発症した。

 単変量解析では、β遮断薬と利尿薬投与は、糖尿病新規発症の有意なリスク因子になっていた。β遮断薬のハザード比 1.4(95%信頼区間;1.3-1.7)、利尿薬のハザード比 1.6(95%信頼区間;1.4-2.0)だった。

 ACE阻害薬への割り付けは、糖尿病新規発症に対するβ遮断薬のリスクに、有意な影響を与えた。共変数で調整したところ、プラセボ群では、β遮断薬は新規糖尿病発症の有意なリスク因子になっていた(ハザード比 1.6、95%信頼区間;1.1-2.1)が、ACE阻害薬に割り付けられた群では有意な関連はみられなかった(ハザード比 1.1、95%信頼区間;0.9-1.5)。なお、利尿薬は調整後にはいずれの群に対しても有意なリスク因子ではなかった。

 Vardeny氏は以上の結果を整理して、「安定期の冠動脈疾患患者において、β遮断薬は糖尿病の新規発症リスクを高める。しかし、ACE阻害薬を併用することで、リスク増加を抑制し得る」とまとめた。

(日経メディカル別冊編集)