米CDCのXiaohui Zhuo氏

 糖尿病前症の人に対する予防介入の費用対効果が最適となるHbA1c値のカットポイント (CP)は、「5.6‐5.9%の間」が好ましいことが示唆された。予防可能な症例数と予防介入のために必要となる費用の推計をもとに、最適なCPを求めた研究により明らかになった。米疾病対策センターCDC)のXiaohui Zhuo氏(写真)らが、6月25日から29日まで米オーランドで開催されている第70回米国糖尿病学会学術集会(ADA 2010)で発表した。

 演者らは、米国全体をシミュレーションできる18歳以上のコホートモデルを構築。さまざまなHbA1cのCPを想定し、それぞれのCPごとに10年にわたる糖尿病の予防症例数と予防介入に必要な「純費用」を推計した。ここでいう「純費用」とは、糖尿病前症の同定および介入にかかる直接医療費から、介入により予防できたことで不必要になる費用を差し引いたものとした。最終的には、質調整生存年(QALY)当たりの費用を求め評価指標とした。

 予防的介入には、代表的な介入プログラムであるDPPとDEPLOYを取り上げ、DPPの場合は症例当たり年間1000ドル以上の費用で55%の発症リスク減少、DEPLOYの場合は年300ドル以上の費用で25%のリスク減少と想定した。

 予防できる症例数は、「介入なし」の場合の推定糖尿病患者総数から、「介入あり」の場合の推定糖尿病患者総数を差し引くことにより算出した。HbA1c値については、米国全国健康・栄養調査(NHANES)の1999〜2006年のデータから求め、糖尿病発症数は総合的な文献レビューから抽出した。

 解析の結果、HbA1cのCPが上がるにつれて予防できる症例数は減少した。また、HbA1cのCPとQALY当たりの費用の間には、U字型の関係が見い出された。DEPLOYを用いた介入では、QALY当たりの費用が最少となったのは、HbA1cが6.1%の場合だった。この時のQALY当たりの費用は約2万米ドルで、約8%の糖尿病が予防できる計算だった。CPを5.7%とした場合は、予防できる症例は15%とCP6.1%より7ポイント増加するが、QALY当たりの費用は約3万米ドルに上昇する。CPを5.5%とした場合は、予防症例数はCP6.1%より9ポイント増加するが、費用は症例当たり約7万米ドルまで上昇する。一方、CPが6.1%以上になると予防症例数は減り、費用は上がる結果となった。こうした結果は、さまざまな費用と他のパラメータについて分析しても同様だった。

 今回の結果から演者らは、「HbA1cのCPが5.6‐5.9%の間の場合、予防症例数とQALY当たりの費用のバランスが好ましいものであった」とした。その上で「糖尿病前症診断のためのCPは、予防症例数とQALY当たりの費用のバランスを政策立案者がどのように考えるかで決まるだろう」などと考察、「最適値は6.1%以上ではないことは確かだろう」とした。

(日経メディカル別冊編集)